2015年6月


「写真を撮る」



                            SIGMA 55-200/4-5.6DC


長い間すっかり忘れておりましたが、私写真家でした。

まあ、”アマチュア”とか、”素人”とかが頭につきますが(笑)。

最近記録でない写真を撮るのは、結構面倒臭いです。人を撮るのに神経を使うのですね。

記録写真なら、顔にぼかしを入れればいいのですが、人物そのものを被写体として作品を撮るのは、ほとんど無理が

あります。まあこっそりとか、偶然とか、いい表情が撮れる時もあるでしょうが、それを発表するすべがない。

「私はこういうものです」と言って名刺を出し、これこれこういうブログとかに掲載させていただけませんか?

まず、いいよ。という人はいないでしょうね。この個人情報保護の時代に。

結局人物を心置きなく撮って、ネットに掲載できるようにするなら、お金を出してモデルさんを雇う。

しかも知り合いに頼むんじゃなくて、ちゃんと肖像権も明記されている事務所との契約が必要で、それなりに

お金もかかるでしょうし、事前チェックもあるでしょう。

面倒な時代です。


というわけで今回は、昨年も行きました徳川美術館の

「山車揃え」のカラクリ人形を撮りに行きました。

人形は人ではありませんので、表情豊かという訳には行きませんが、ふとした角度の変化で、能面のように

表情を変えます。

そして、何百年も大切に受け継いできた人形の頭(かしら)は、あたかも生きているような力を持っています。

昨年は初めてだったので、全景や山車そのものに興味津々でしたが、今年は望遠レンズで人形に焦点を当てようと

思い、愛用のSIGMA 55-200/4-5.6DC。通称

「貧乏人の名玉」を用意しました。35mm換算300mmの中望遠ですが、まあアイドルを撮る訳じゃなし。

今回はカラクリを撮りたかったので、

ベストポジションの、徳川美術館入り口前に向かいます。



                            SIGMA 55-200/4-5.6DC


さすがに皆様よくご存知で、このあたりは満員。

背の低い子供さんなんかは、全然見えません。

次世代にこの文化を引き継ぐために、

「子供見学席」とか作って欲しいですね。ついでに60歳以上優先席とかも(我田引水(笑))。

後ろで、小学校高学年と思しき女子たち。一人だけ結構興奮してますよ。

他の子は結構クールで、スマホ(持ってるんだね今時は)とかDSいじってました。

思うに前から見に来ていて、結構通な子(地元ではないと思う。地元なら山車の中でお囃子やったり、山車を

引いたりするだろうから)が、友達を連れてきた図。というところか?

でね。その子が叫ぶんですよ。

「ほらほら!ゆとりが来た”ゆとりが来たよ!」

ゆとりって、おまえらじゃん。と思ったのです。或いは友達でとりわけゆとりっぽい奴が、そう呼ばれていて、

ゆとりらしく遅刻して来たのかと。

「ゆとりって、綺麗なんだよー」

ああ湯取車か。

昨年の6月に詳しいですが、筒井町が2台保存している山車の一台が湯取車です。名古屋市内の現存の山車では

最古のもので、この子はその価値をよく知っているのですね。

しかけは、笹を持った巫女が踊り、湯釜から熱湯に見立てた紙吹雪を撒き散らす。というものです。



                            SIGMA 55-200/4-5.6DC


これはこれで、派手で確かに綺麗ですが、後の4台もなかなかすごい。



                            SIGMA 55-200/4-5.6DC

↑新出来町、鹿子神車



                            SIGMA 55-200/4-5.6DC

巫女さんが、



                            SIGMA 55-200/4-5.6DC

↑一瞬で鬼女に(筒井町、神皇車)



                            SIGMA 55-200/4-5.6DC

↑古出来町、王羲之車。


と、トリッキーなカラクリが目白押しで、おそらく真下で仰向けに操作する人の熟練の技もさることながら、

この仕組みを何百年もメンテナンスし続ける、町衆たちの努力に頭が下がります。

五体のカラクリたちの中で、私が一番好きなのが、

中之切の河水車です。

「この地に伝わる能楽”石橋”をモチーフにした石橋車が惜しくも戦災で焼失したため、若宮祭の祭礼車”河水車”を

中区住吉から譲り受け、人形だけ改装したもので、勇壮で激しい動きの獅子舞)」とあります。

つまり、能楽を舞う姿です。

今回の表題写真にした、人形の頭が大変可憐で好きなのですが、



                            SIGMA 55-200/4-5.6DC

実際にはかなり頭がぐるんぐるん回ります。


                            SIGMA 55-200/4-5.6DC


人形のいわゆるリボルテックな部分が、はっきり分かると思いますが、この激しい動きのメンテナンスを代々行ってきたからこそ

戦後他の土台を貰い受けてきても、戦前と同じカラクリを再現できたのでしょう。

大したものです。こういう技術の継承には敬意を表したいです。

今回も最後に赤い髪がうまく戻らず、何回かやり直したりしましたが、この激しい動きは結構大変でしょう。



                            SIGMA 55-200/4-5.6DC


↑今年も徳川美術館前の、山車の回転には大きな拍手が巻き起こっていました。


件の山車愛好少女に前席を譲ってやりましたら、夢中で写真を撮っておりました。

解散する折に、どんな子か顔をチラッと拝見しましたら、河水車の人形によく似た古風な顔立ちの美人でした。

1000人の中で一人でも、こういう伝統文化に関心を持つ若い人たちが出て来れば、これからの日本も安心だなあ。

と満足し、今年も愛女商の屋上で育てた蜂蜜と、被災地のリンゴで作ったアイスを食べて、家路に着きました。


 
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