2011年10月 

 

  題名 「ふむ」

  
                                

                              KYOCERA K006


 相変わらずのくいもんネタで恐縮ですが(笑)、ナゴヤで麺と言えば、きしめん。

あと味噌煮込み※精々醤油とんこつの名古屋ラーメン(いわゆる屋台系)。

「名古屋が蕎麦どころ。」と言うのは聞いた事がないですね。

蕎麦はやはり信州。あとは江戸の名店ですよね。薮そばとか、更級そばとか。


※他県の人で誤解している方も多いが、きしめんと味噌煮込みは、全くの別物。

 きしめんの麺は幅広でへろへろ。味噌煮込みは、うどんを茹でずに使う。

 このうどんは茹でないため、固い。また塩を入れていない(茹でれば塩分が

 ぬけるが、茹でないため)。粉っぽさ一杯なので、汁がどろどろになる。現在名古屋では、

 カレー煮込みが流行。鳥ではなく、豚肉を入れ、後は普通の味噌煮込みに大さじ一杯程の

 カレー粉を投入するだけ。インスタントや冷凍でも、結構美味しくなる。


 私にとっての蕎麦は、

「大晦日に食べるもの。」です。

年末年始も休まず営業、という恐ろしい仕事だった頃、閉店30分前の薮そばに駆け込んで

すすった年越し蕎麦。

「ああ、今年も終りだなあ。」という気がしたもんです。翌日も出勤でしたが(涙)。

後は金が無い時、いつ買ったかも判らない在庫の乾麺の蕎麦(そうめんの時もあり)を

茹でて、麺つゆ薄めてすすったおもひで(しょっちゅうだぜ(涙))。

なんで日常に蕎麦がないかと言うと、それはね。

高いからです。

立ち食い系のなら安いですが、ああいうとこの、やわい、もううどんだか、蕎麦だか

わからないの喰う位なら、はっきりうどんだとわかるうどんを(くどい(笑))

喰った方がまし。


 米の喰えないお百姓の常食だった蕎麦は、お江戸に出て立派なごちそうになりました。

しかもちゃんとした国産そば粉でうつ蕎麦は、今や高級品。

ざるそばが一枚700円だ、800円だという時代です。

前にも引き合いに出しましたが、美味しんぼの、ざるなら30枚は軽いという警部さんは、

どんな汚職をして稼いでいるんでしょうか。2万円以上ですぜ。

まあ、そういう訳で、私が店でざるそばを食べたのは、前述の大晦日以来なかった訳ですね。


 今回蕎麦を喰いたいと思い立ったのは、

「非日常な贅沢」を味わいたい、という事なのです。

にんじん、と言う様なちょこちょこした、ご褒美目標ではなくきちっと日常を離れた、

美味しい目にあいたい!と言うのが欲しくなるんですよね。かといって、

「台湾喫茶の旅(行きたいゾ)」とか、

「近江八幡招福楼の夕食(一度だけ行ったのが一生の自慢、東京店じゃ駄目だお)」とか、

金と時間のかかり過ぎる非日常は望めませんので、日常まず食べないものを喰う。

位が関の山です。

蕎麦なら滅多に行かないし、なんとか千円以内で非日常を味わえると言う訳で、候補を

捜しました。


 美女と野獣、が最後まで残りました。

「ふたば」これが美女ですね。たおやかな細い麺。細心のおもてなし。なによりあの

石川さゆりさんが、名古屋に来ると駆けつける、という名店。

石川さゆりですよ、お父さん。

「津軽海峡冬景色」と

「天城越え」で、一生喰ってける大歌手ですよ。一般には津軽海峡が上ですが、

カラオケでは天城越えは年齢問わず女子が異常に好む楽曲です。

私、この番組見てました。PSでしたね。なんかアポ無しで名古屋に来た有名人に

お気に入りの美味しい店に、本人に!連れて行って貰うと言う、とんでもない企画で、

さゆりさんがつかまって、タクシーで行ったのが、このふたばと言う訳。


 もう一つは、これも凄い野獣派の

「七里庵(シチリアン)」なんだよ、そのマフィアみたいなネーミング。ネットで

感想書いてる人の大半が

「固い!でも茹でたりない訳ではない。」

ここは十割蕎麦。ふたばも十割はやりますが、ここはこれ一本らしい。そもそも、

蕎麦粉だけでは固い、ボソボソすると言うので小麦粉2割を混ぜた二八蕎麦が定番と

なったのですが蕎麦粉がどんどん高級品になり、定年世代の人気趣味が蕎麦打ちに

なるにつれ、もう

「全部蕎麦粉の方が偉いのだ。それでいいのだ。」とばかり高級蕎麦店が十割蕎麦を

出す様になりました。

池波正太郎先生の小説にありますが、蕎麦は最初は蒸して出した(蒸しパン?)のが、

次第に細長く切って、茹でる様になり、その過程で一番良いのが二八と決まったの

ですが、固い、もそもその十割蕎麦を有り難がってすするなんぞ、

「滑稽だね!」と山岡なら言って、ゆう子さんが気を揉みそうですが、

いざや名店のお手並み拝見!したいもの。


 で、どっちに行ったかというと、まあ皆さん聞いて下さい。

どちらも西区にあるんで、まずは押切へ。蕎麦屋の為のような地名ですね。

「ふたば」さんの隣には銀行のキャッシャーがございまして、ここで軍資金をおろした

関係上ふたばにしたのでした。

ただここで、小さなドラマがございまして、私、紙幣を数えていて、一枚落とした

のですね。ご婦人の足下に千円落ちたのに気づかなかった。

「落としましたよ。」と拾って渡して下さった。

「ああ…。子供が車に轢かれても誰も助けない国があるのに、日本はなんと優しい

のだらう。」と感動して、

「この千円は無かった物として、取材につかおう。」と決意したのでした。

募金するとかじゃ無いのが、私の愚かさ。


 で、ふたばに行ったのですが、もうどこが入り口か判らない地味な作り。

かろうじてランチメニューを示すボードがあり、ああ、蕎麦屋か…と判る程度。

店内は芸能人好みのオシャレな店内、では全然なく典型的な町のお蕎麦屋さん。

店員さんも感じがいい。おしぼりが出る。自家洗濯だな?匂いがいい。

水が出る。水なの?

ランチのエビ天ぶっかけとかいうのを注文。800円。

ぶっかけていうのは、名古屋風に言えば

「ころ」かな?器に蕎麦を入れ、汁がかかった冷たい蕎麦。

小さめだが、超美味いエビ天が2匹程。肝心の蕎麦は皮を轢かない更級系で、

細い細い麺。さゆり様ご執心は充分頷ける。

あれほどの芸能人で演歌歌手だから地方巡業も多いだろう。蕎麦の名産地も

散々行き、接待も多いと思うけど、名古屋に来ると駆けつけてしまう。

と言うのが、なんとなくわかります。夢中で食べました。

そば湯が出て、最後にお茶が出る。憎いね。

ここはせいろという、他店なら盛り蕎麦というのかな?これを450円で出すと言う良心的。

十割のせいろも600円。

隣席の旅人風若者は、十割せいろの替え玉を2回もしている。喰い過ぎだろおまえ。

牛丼メガ盛じゃないんだから(笑)。

結構ボリュームがあったランチメニューを平らげ、満足して店を出ました。


 ここで取材は充分なのですが、なんとなくまだ千円ある様な気がするアタシ(@浅はか)。

「七里庵は場所が分かりにくい。店だけでも捜しておくか。」

と枇杷島へ。確かに判りにくい。商店街とも言えない様な路地に、これも

蕎麦屋とはわからない店構え。看板が入り口の上にかかっていたので、バイクで通り過ぎて

気づき戻りました。結局入ってしまいました。



                                KYOCERA K006


十割蕎麦のざる。これも800円。感想としては、さすがに美味かったです。

私の蕎麦の原点は木曽福島の車屋ですが、ここのは細い麺にして、十割でも

噛み切れないとかにならない様にしている。ただ、汁が醤油系。私は鰹節の充分効いた、

甘めのが好みなので、ちょっと蕎麦とは違うものを食べてる気がしました。

ネットに書かれている程固いとは感じなかったけれど、

「これが本物の十割蕎麦なら、普通の二八のほうが好き。」

な私でした。ただこの店には、

「そばがき。1300円(粉の入荷により出来ない場合があります)」がありまして、

これはいつかトライしたい。そばがきは、純蕎麦粉なものだと思いますからね。


 蕎麦屋のはしご、という、もうこれは

「非日常の極み(というかやろうと思う人は稀(笑))」の体験をしたので、

「流石に夜はもう入らないな。」と思ったのですが、忠臣蔵の故事※の如く、結局

夜は夜でお腹が空いたのでした。蕎麦は水分が少ないため、他の麺類よりカロリーが

高かったりするので、困るのですけどね。


※討ち入りの夜、四十七士は蕎麦屋に集合し蕎麦を食べたと言う。蕎麦は消化にいい

 ので、討ち入りの際戦闘で腹を切られても、内容物が出て無様になったりしない、

 という誠に武士らしい発想だったそうである。

 
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