2010年6月 

 

  題名「科学の子」 


                         Summicron 1:2/5CM


   「久しぶりにプラネタリウム行きたいな。」と思っておりました。

 そしたら、なんという偶然!ニュースで、名古屋市科学館の

 新プラネタリウムドーム完成という報道がありました。

 といっても、これから整備して公開は来年春(おそらく3月)との

 事です。

 名古屋市科学館がリニューアルされる事は知っていました。

 出来たのが私の小学生の頃ですので、そろそろ老朽化は激しいだろう

 と思います。ただプラネタリウムをどうするのかは知らなかったので

 「ああそっちも新しくするんだ・・・。」位に思ったのですが、

 「世界最大の」が付くと、ちょっと興味をそそられます。


  名古屋市科学館にプラネタリウムが開業したのが今から47年前、

 当時としては世界最高水準のドイツ製の機械が導入され、話題に

 なりました。子供の頃プラネタリウムを見た子供は、間違いなく

 その夜布団の中で懐中電灯と穴の開いた上で、星空を作ろうとする

 筈です。

 本物のプラネタリウムは無数の光学レンズと複雑な回転機構の塊で、

 コンピュータなどという物が無かった時代に、天体の動きを具現

 するには、さぞかし精密な機構が必要であったろうと思われます。

 クオーツ時計が出来る前の腕時計みたいなもんで、天文時計と、

 光学技術の粋といっていい工業製品がプラネタリウムです。

 もちろんその後はコンピュータ制御も付加して行ったのだろうとは

 思いますが、基本は47年前のまま。さぞかしメンテナンスが大変

 だったろうと思われますが、長期に亘って働き続けるメカ、という

 点で、ドイツ(カールツァイス製)の工業力の高さを感じます。


  今回新科学館の目玉になるのが、最新のプラネタリウム。

 ドームの大きさが世界最大の35m※(従来のは20m)。

 小学校のプールより10mも大きい直径の巨大ドームが、このほど

 完成した訳です。このドームの天蓋部分に星を投影する訳ですから

 光軸が散らない様に、かなり強力な光源が必要だろうと思います。

 直径35mと言う事は、天井の高さが半径の17.5mあるでしょうから、

 そんな遠距離(ロングディスタンス)に星(丸い点)を投影して、

 観客に見せるには、かなりの光量がいるでしょう。

 どうも光ファイバーを使って、レンズまで光を導くようで、これなら

 ロスも少なく、設計も楽であろうと思われます。


 ※調べてみると、従来のプラネタリウムの大きさベスト5は全て

  日本にあり、今までの第一位は直径33mで愛媛にあるとか。

  どんだけプラネタリウム好きなんだ、日本(笑)。


  「ようし来年3月には、絶対行くぞ!」とそれまで生きてるぞ!

 という爺的決意をした私ですが、同時に

 「これは、懐かしい方も見ておかねば。」とも思った次第です。


  で、先日の日曜日に見に行って来ました。

 昼過ぎに白川公園に到着。名古屋にも米軍が駐屯していた時代が

 あり、空襲で丸焼けになったこの長島町一帯を接収して、米軍の

 キャンプが作られました。やがて米軍が撤収した後に作られたのが

 白川公園で、科学館南のグラウンドは、キャンプと、戦前の日本軍

 が使用した広場の名残と言われています。

 科学館には北側の駐車場を全部つぶして新科学館が建設中で、縦に

 細長いビルとビルの間に、まるで

 「ウルトラの母の顔」の様に(このイメージ、お判りでしょうか?)

 直径35mの巨大ドーム(というより球)が出来上がっています。



                 Summicron 1:2/5CM


  日曜日と言う事で、館内は親子連れで一杯です。

 入場券(大人、プラネタリウム+科学館)は600円と、まあ安いと

 思いますが、正直科学館の展示は何も目新しいものがありません。

 「なんかボタンがあるので押すと、解説する。」スタイルですね。

 大体学校からの見学だと、生徒は好きに回って、後からレポート提出。

 という形でしょう。

 来て初めて知ったのですが、このリニューアルの為に、科学館は

 今年8月一杯で休館との事で、早く来て良かったと思います。


  さて到着して聞いてみると、一番早いのが14時半で、これは

 キッズアワーという子供向けの回との事でしたが、私は早く帰って

 もやしのヒゲを取らねばならないので(笑)、この回にしました。

 売り場の人は、

 「本当にいいんですか?」と言いたげな表情です。

 無理もありません。

 髭面の爺が、独りでプラネタリウムを見に来るなど、

 1.筋金入りの天文オタク。

 2.人生に疲れて星空で癒されたい人。

 辺りが想定され、子供満載の場内には馴染みません。むしろ

 「子供が大好きな人」という、最近では文字通りには中々受け取って

 貰えない(アブナイ)人に思われないか心配でした。でももやしが

 待っておりますので、やむを得ないのです。


  14時半開演、14時10分会場と言うので、充分余裕を見て、

 14時に入り口に行ったのですが、考えが甘かったのです。既にもう

 連絡通路に列は折り返しておりました。並んでいるのはほぼ90%が

 家族連れ、残りがカップルと私の様な独りで来たとおぼしき男女。

 衣替えの日に冬服で来ちまった様な違和感があります。

 子供達はじっとしていない。わめく、泣く、走り回る。中には、

 「これから暗くなるけど、泣いちゃ駄目だよ。」と親が言い聞かせて

 いる、どう見ても一歳児(無理だろ(笑))とか。


  なんとか開場し、家族連れの間に遠慮しつつ座る。

 前の子は背もたれが倒れるのを面白がって何度もがんがん倒す。

 その都度私の、モデル体型の長い足(嘘)に当たる。

 泣き出す子もいる。上演5分前におしっこといい、親がまた

 「すみませんすみません。」と列を通る。前の席が倒れているので

 前の人にも協力してもらわないと通れない。

 この辺新プラネタリウムには改善してもらいたい点ですね。

 47年前とは日本人の足の長さが違うので。


  隣の小学生低学年位の女の子は、解説の人に、

 「トイレ大丈夫?暗くなってもおねしょしちゃ駄目だよ。」と言われ

 「おねしょ。くすっ。」と笑うのがなかなか可愛らしく、

 「いかん、こんなポイントで萌えては、アブナイ人だ。」と反省。

 動物の子が人間も含め全て可愛いのは、親に保護される為だという

 説があるけど、うちの子もあんな可愛い頃があったなぁとしみじみ。

 キッズアワーらしく童謡やアニメ主題歌(教育テレビのもの)が、

 流れると、会場は一緒に歌いだす。普段地下鉄やファミレスで騒ぐと

 「迷惑なガキだなあ(失礼)。」と思うけど、今回は彼らが主役。

 この一体感はAKB48並みだ(行った事ないけど(笑))。


  解説はテンション高い戦隊ショーのMCを想像したけど、普通に

 解説員口調の男の方で、最初は場内はザワザワしていましたが、

 なーに、機械が動いちゃえばこっちのもの。もう子供達は、

 「おーっ!」「わーっ!」と星空に見入っています。

 幼稚園行かない子も多いのに、結構食いつきがいい。

 実は私、半分位寝てました。プラネタリウムで寝ている人が隣から

 「外で寝ると風邪引くぞ。」と言われる、というギャグがありますが

 ほんと何だか気持ちいいんですよね。

 アボリジニーは基本的に家を持たず、雨が降っても、そのまま大地に

 寝る文化を持つといいますが、人間の先祖からの記憶に

 「星空の元で眠る」という事が刷り込まれているのかもしれません。


  久しぶりのプラネタリウムは、なかなか気持ち良いお昼寝タイム

 となりました。

 「くすっ。」の女子も、眠りこけている隣のおっさんはなんなんだと

 思っていたかも知れませんが、この心地よさは貴重。


  ちなみに来年3月からの新プラネタリウムは、現在の機械のような

 鉄アレイ型(解説員は子供達が判りやすいように「蟻みたいな」と

 言った)の機械ではなく球形一つのタイプに(光ファイバーの

 おかげかな?)なるようです(完成図によると)。

 記憶に残る、あの形の機械※に会いたい方は8月中にどうぞ。


 ※名古屋市科学館では、7、8月はカールツァイスIV型の性能を

  最大限に引き出す、お別れプログラムを組んでいる。

 
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