2012年6月 

 

 「隠れ家」


 

                               Sigma DP-2 


 このところ、ある食品の事をずっと考えておりました。

この食べ物に最初に出会ったのは、幼稚園の時。テレビの中で。かの米国アニメ

「ポパイ」です。登場人物の一人、今で言えばモブキャラのウィンピーがいつも旨そうに

食べている。

当時日本には丸いパンがありませんでしたから、我々には想像も付かない味でした。

マクドナルドの上陸→大成功は、日本の子供達がこの不二屋提供の番組を毎週見ていた事

からの刷込みだけで約束されていたのです(ホーレン草も食べる様になった(笑))。


 学生時代には、マック、ロッテリア、モスには散々お世話になりましたが、まだ街の

小さなハンバーガー屋さんも存在しており、色んな味を経験していました。

一番美味しく感じられたのは、就職してから通った、名古屋市天白区植田にあった

「Diner's」という、車を改造した様な形の完全なアメリカンドライブインで、

ここの各種の大きなハンバーガーは、本当に美味しかった。

一個1000円もするハンバーガーというものも初めてでしたし、アメリカ映画に

出て来る様な服装のウェイトレス(一人本当にアメリカ規格のスタイルな人がいた)も

嬉しいお店でした。大層繁盛してたのに店を畳んでしまい、惜しまれて居ました。

後に大須で同名のアメリカンレストランが出来、開店当時に、あの店の再来かと

聞きましたが、全く無関係とのこと。店員さんが苦笑混じりに

「今日そのこと聞かれたの3人目です。」と言っていました。

すぐ近くのビレッジバンガード本店と並び、天白区の名所だったのですが。


 そういう美味しいハンバーガーに是非また出会いたいものと思っていました。

佐世保バーガーは名古屋にも何店かあり、まあそれぞれに旨いですが、

単価が高いですよね。トルコ人経営のケバブ屋台と同じく、旨いとは判っていても

通り過ぎます。

具じゃなくて本質的にパテとバンズの質がいい、海原雄山に

「この様な下品なものを…。見ろ手が汚れてしまったでは無いか」

(全部喰ってやんの(笑))と言わせる程の出来のハンバーガーが食べたい。

アメリカで、食い物が炭火でグリルしたパテをバンズに挟んでひたすら喰うだけ、

というバーベキューパーティーに招かれた事がありますが、ハンバーガーは

やはりアメリカ人のソウルフードなのでしょう。


 日本に来た外国人の和むスレで、アメリカ人をハンバーガーショップにつれて

行くコピペがありました。

「おいおい、俺が一体何個のハンバーガーを食べて来たと思うんだ。日本で

ハンバーガーなんて、え?この店ボッタクリじゃねえの?

(食べて)なんだよこれ、なんだこのチーズ!

俺が今まで食べて来たのは、一体何だったんだ」

と言う様な内容だったと思いますが、

日本のいいハンバーガーショップはアメリカ人にも驚きの様です(マクドも日本の

方が旨いという人も。これはどうだか判りませんが)。


 件のコピペのお店は、名古屋にも数店ある、高級な方のチェーン店の事の様

なので早速行ってみました。

うーん。旨いが高い。

もちろん300円台の普通のもありましたが、無理して高い方の

「クラシックバーガー」というのにして見たのですが、パテがなんか本当に家で

作ったようなハンバーグ。要は粗挽き肉なのね。旨いのだがこれは家で作れるぞ。

次回は通常バージョンを食べようと誓ったのでした。

あの値段ならモスの高いのの方がいいかも。


 次の休日に、またチャレンジしようと思ったのですが、

まてよ?他に専門店はないのか?

と思い検索。

ココイチに駆逐されたカレー専門店と同じく、マックかモスかの2択に近い現状で

「ハンバーガー専門店」と銘打っている店は激減しています。

ようやく一軒ヒット。

「ふーん、こんな所に店あったかなあ。」

半信半疑で行ってみた。

ああ、神様ありがとう。

お店は小さな構え。当然アメリカンカフェのインテリアです。目につくのは店内の

1/4以上を占めるキッチン。ただ者ではない。

前回の失敗にこり、全く定番のチーズバーガーを注文。420円。メニューに

「バリューセット。」というマクド的なものがあり、飲み物と、ポテトと、

サラダかチキンがつく。390円。これも頼んでみる。

(写真のバーガーは思わず追加したテリヤキバーガー。最近喰ってから写真撮って

ない事に気づく事が多い(笑))


 窓際の席で、梅雨の中休みの日差しが心地良い。図書館で借りた文庫本を読む。

先行して来たアイスコーヒーを飲む。

「ん?これは…。」旨い!カフェを名乗るだけある。

ファミレス、ファーストフードの焦げ茶の絵の具を溶かした様な薄いのは論外だが、

名古屋的な泥みたいなコーヒーでもない。

華やかな、なんつったっけ。そうそうアロマ。

もうこの時点で後から来る炭焼きハンバーガーの出来は想像できました。


 ここのは、まずバンズが特注です。

それも粉の銘柄、挽き方まで指定しているっぽい。

パテは、自家製ハンバーグ的ではなく、ちゃんとハンバーガーパテだが、これも

炭焼きの旨さ。

高級なプレミアムバーガーは更に凄いバンズらしい。

今度たべるかな?でもこのバリューセットも捨て難い。サラダはごく普通の

コールスローでしたが、はて妙に美味しい。

3本程付いて来た大きなカットのポテトは、フライではなく、絶妙のロースト。

愛用のデジカメで撮影していたら、隣の席のお嬢さんもiPhoneで写真を撮ってた。

ブロガーかな?


 ここの所、休みの日は大須で台湾餃子を食べてと言うのが定番でしたが、

この店は通いそう。

マスターもアメリカン親父的な大男ではなく、いかにも研究熱心そうな人。

でもラーメン屋にありがちな独りよがりな職人風ではなく、穏やかな風貌の

修行僧の様な方でした。

「他のものも負けてませんが、特にバンズが凄く美味しいですね。」と言うと

「特注のバンズだと、どうしても形が不揃いでお客様がどう思われるか、

心配なんです。」

なに言ってるの!そこがいいんじゃないの!(山岡風に(笑))


 休日のランチはここに決めようと思います。

それから大須に繰り出せば言い訳だし(やっぱり行くのか(笑))。

 
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