ヤドカリの貝殻
 
 
2016年4月
 
 
「記憶に齟齬はございません」
 
         今回の写真は全てiPhone6です
ナゴヤからの手紙で、今月のヤドカリは、5月4日のイベントの準備総まとめ。と
書きましたが、これは5月の”ささやか写真館”に変更します。
まあ、年に一度のイベント準備などは”日常コラム”ではないな。と言うのと、
その準備に時間とお金を吸い取られ、4月の写真館に掲載すべき内容がない。
ということです。どっちかというと後者(汗)。
 
というわけで、今回なにかないかと思ったのですが、実は女の子並みに
「わー今度のお出かけ、何着ていこう?」と思ってしまって、もちろんオシャレ
というよりは、目立つ服装。最初は車で行く気だったので、私の部屋にある
物干ポールに横断幕(紙製)を吊ってお客さんを呼ぼうと思ったのですが、
諸般の都合(お金(汗)。だから電車もパス)で、バイクに変更し、車は雨天だけ
家人に頼んで借りる事にしました。
というわけで、まあそれほど大勢詰めかけるイベントではないのですが、
同人誌著者兼発行人にして、印刷製本業者である私が、たった一人の売り子と
して参加する事になるため、できるだけ訴求力のある衣装が必要な訳です。
もちろん着ぐるみ等は無理ですので、スタッフジャンパーとかTシャツとか。
詳しくは数日後の”ささやか写真館をお楽しみに。
と言う事で、アイロンプリント用紙を購入せねばならないのですが、ここで
困った事が。
 
この用紙自体はA42枚で6百円くらいなのですが、今月からAmazonが代金
2000円未満だと、送料がかかる様になりました。
今後は送料無料のヨドバシとかにシフトするにして、今回は意中の商品が
Amazonでしか見つかりませんでした。あと1400円程買わねば。
なんかAmazonの思うつぼのような気がしますが、なんかないか探しました。
Twitterで西原理恵子さんがリツイートしてた記事に、
「うまかっちゃんで焼きラーメンを作る」というのがあり、随分懐かしい名前
だなあ。と丁度思ってたのです。
このラーメン。博多風の白湯(パイタン)トンコツラーメンを全国に知らしめた
ハウス食品のインスタント袋麺ですが、現在は名古屋ではまず見かけません。
とっくに製造中止になっていたと思いましたが、実は九州では未だに販売されて
おり、それどころか、売り上げダントツだそうです。
 
食品界に”二大禁断の魔法の粉”と呼ばれる物騒なものがあり、その一つが
「ハッピーターンにまぶされた粉」である事は諸兄諸姉も異論はなかろうと
思いますが(異論は認めない(笑))、もうひとつがこの”うまかっちゃん”の
粉スープという訳です。
なにしろ、全く流行らず、潰れそうなトンコツラーメン店主がやけを起こし
自店のスープに大量のうまかっちゃんスープを投入した所、またたくまに
行列のできる有名店になり、店主は今も自宅で麺の方を処分する作業に苦慮して
いるというような、まことしやかな話があるくらいです。
はじめてこの袋麺が名古屋にやってきた時、私はすでに就職しておりましたが
本名から私は子供の頃
「かっちゃん」と呼ばれており、なおかつ午年でもあるので、大いに贔屓した
ものでした。独身生活の友であったわけですね。
そのころは、名古屋にはほとんど本格九州系トンコツラーメンはなく、
「なんかスガキヤのラーメンに似てるな」と思っただけですが、気に入りました
スガキヤと言えば、昔九州出身の友人が、
「スガキヤのラーメンなんか博多ラーメンじゃない!」と顔を真っ赤にして
強調した事があり、周りの名古屋人は
「うん、違うよ。スガキヤはスガキヤだもん」と相手にしませんでした。
確かにスガキヤのラーメンは、創立者が当時甘味屋であった寿がき屋の客の為に
(当時は気楽にお汁粉とかを食べてもらえる様に男子禁制の店舗もあった)、
今までと違うあっさりしたラーメンを。と九州を食べ歩き、確か久留米の
ラーメンを参考に独自のレシピを開発した物ですから、ルーツは九州ですけどね
 
その後名古屋にも本格的な九州ラーメンが開店し、今では名古屋屋台ラーメンや
台湾ラーメンと並んで人気ですが、後からやってきたそういう店に比べて、
うまかっちゃんは、当時の私の舌では、
「マイルド」という評価でした。マイルドというのは弱いという印象にも
つながりがちで、インスタント麺の世界でも後発の
「横道もんラーメン(正式名はもっと長い。鮎川誠がCMキャラだった)」など
も現れ、名古屋では販売自体がされなくなった様です。
このすっかり忘れていたラーメンが魔法の粉と呼ばれること。九州では健在で
マルタイ棒ラーメンを抑え、シェアトップである事を知り、驚いた事に私の舌に
ある味が甦ったのです。
それは、牛乳を飲んだ後に舌に残るのと似た、クリーミーな感触。
甘い、塩からい、辛い、酸っぱい、苦いに続く旨みの味覚。かつて西洋人は
認めようとせず、日本料理普及につれ、ついに世界が認めた旨みの感覚とも
さらに違う感覚です。舌を上あごに強く押し付けたとき、わずかに感じる感覚
油分だけとは思えませんが、まあ仮称して”クリーミーさを感じる味覚”が
記憶上の私の舌に甦りました。
 
こうなると買わない訳には行きません。念のため何軒かのスーパーを廻りました
今池のダイエーが健在なれば、置いていたかもしれない。残念ながら昨秋
名古屋の最後のダイエーがイオンにかわりました。絶望的!
ネットで調べた所、そもそも中部地区では販売してないとの事(もしかしたら
ヴィレッジバンガードならあるかも?あそこ変な物仕入れるの得意だし)。
Amazonで、5個パック×2が1500円。一個150円は袋麺としては破格に高い。
でも実に30年ぶりに、あの味覚を確かめたい。誘惑に負けました。
まあラーメンなら、食費と考えれば、そんなに無駄遣いとは言えないでしょう。
 
 
具は卵のみ。昔の私のスタイルです。これを夜食に食べてたという。
無茶しやがって。
調理法は全く普通です。当時の私はマルタイと同じ様に、添付される調味油に
秘密があると考えていましたが、どうも粉の方に秘密があるみたいです。
3分で火を止める(と言ってもIHですが)直前に卵投入。
 
 
これはいいものだ(うまる口調)。
さて早速試食。
麺はインスタント特有の縮れ麺。当時より少しツルシコ度が上がった?
まあ言うても、この辺の麺の食感は、まあ高校受験性の頃から親しんだ
「出前一丁」と大差ありません。しかしスープは?
あああ!勝手に甦っていたあの感覚をさらに鮮明にした味覚。
「これだよ!これがうまかっちゃんだ!」
マイルドとは、軟弱ではなく、洗練を言うのですね。
店に入ると、プンとトンコツを煮る匂いが臭う店。九州人にはたまらんみたい
ですが、他の地方では敬遠されます。博多の名店が乗り込んできて、まず
旨く生き残れないのは、この辺の嗅覚に拘る感覚が、他地方と違うからです。
まあ、名古屋のきしめん屋の、もの凄い鰹節を煮る臭いも他県の人は我慢が
ならないらしいですけどね。名古屋人にはたまらなくいい匂いでも。
そんな正統派博多屋台系の、ガツンとくる味覚とは真逆のマイルド。
これは、ハウスが意図して作った味らしいです。
開発の時に九州出身の主婦に広くアンケートした結果だとか。
スガキヤのレシピ逸話と同じ発想ですね。
 
九州のうまかっちゃんは、今では何種類もバリエーションがあるそうで、
よりワイルドを求める希望もあるのでしょうが、店からトンコツ臭を追放したと
言われる一風堂が全国制覇、いや今や世界制覇に向かっているのも、マイルドな
味が多くの非九州人の支持を得たから。と言われます。
うまかっちゃんも、まだまだ全国競争力があるのではないでしょうか?
惜しいですよハウスさん。
今回自分の舌が、はっきりうまかっちゃんのスープを覚えていたのには、
本当に驚きました。この辺の記憶は確かなんですね。仕事や日常の記憶力は、
どんどん駄目になっておりますのに。
翌日、西原先生おすすめの焼きラーメンにも挑戦。挑戦と行っても、もやしを
炒めておき、茹でた麺を投入して焼き、最後に調味油とスープをまぶす。
と言うスタイルですが、これがまた旨い。
 
 
ソースをかけないので、なんか生焼けの様ですが、しっかり火が通っています。
これは美味だわ。
朝忙しい時はちょっと無理かな?と思いましたが、休日の夕食にはいいでしょう
問題は、この定番にしたいラーメン(今までの定番。みそラーメンはマルちゃん
正麺。カップ麺はブタメンとんこつ)を今後どうやって確保するか?
おそらく九州では5個サンキュッパあたりじゃないかと思います。
とりあえず、 九州に友達を作らねば(笑)。
 
今回もすばらしい食品に巡り会い(再会し)ました。感謝感謝。
 
 
ごちそうさまでした。