ヤドカリの貝殻
 
 
2016年2月
 
 
「売れるアニメを作る方法」
 
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今期も折り返し点を過ぎました。
打ち切ったものもありますが、今期は2クールもので続いている作品が多いので
見るべき物のない曜日は少なく、そこそこ楽しめました。
新しいものの中では、ナゴヤの方で紹介した
「だがしかし」が一番楽しみです。あとは
「昭和元禄落語心中」くらいですかね。ベテラン声優3人の名人芸。
 
前期から続いている作品の中では、注目しているのが、この
「おそ松さん」です。
この作品はもちろん、ギャグマンガの巨匠、故・赤塚不二夫先生の名作ですが
この作品にしろ、”もーれつア太郎”にしろ、赤塚作品は、主人公よりも
脇役の方が目立って、いきいき動き始める事が多いのは有名です。
”天才バカボン”でもバカボンのパパの方が目立ちますよね。
おそ松くんのイヤミ、もーれつア太郎のニャロメなんかは、一世を風靡しました
 
テレビアニメとしては3期目にあたりますが、アニメ化は27年ぶり。
赤塚不二夫先生生誕80周年を記念して企画された作品という事ですが、
なんで今更この作品のリメイクをするのか?
私の子供の頃のマンガ作品ですから、その後のアニメ化を含めても、
リアルでファンだった人達は、せいぜい40台以降。まあ有名な作品ですから
名前は知っていても、マンガを読んだり、アニメを見た事がない世代が大半。
だからこれが、いわゆるノスタルジアではないのはわかります。
 
じゃあ、なぜ今この作品なのか?
これはひとえに
「主人公が6人居るから」なんですね。
まあセーラームーンだってそれくらいはいますけど、おそ松くんの場合、
原作や今までのアニメ化では
「六つ子だから、顔も性格も一緒。常に6人で行動」して、これにイヤミや
ちび太などが絡む。という図式でしたが、今回はしっかりキャラ付けしている
下の絵は従来型で、今回もこの松葉の絵のトレーナーを着て並ぶ事はあります
ただし、表情は区別出来ますね。
 
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もっとキャラ別けが判るのが、下の絵です。
                  資料映像
 
で、なんでキャラを分けると当るかといえば、当然、前は一人六役だった
声優が6人必要になるからです。
松野おそ松…櫻井孝宏(下鴨矢三郎@有頂天家族)
松野カラ松…中村悠一(司馬達也@魔法科高校の劣等生)
松野チョロ松…神谷浩史(阿良々木暦@物語シリーズ)
松野一松…福山潤(小鳥遊宗太@Working!)
松野十四松…小野大輔(古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱)
松野トド松…入野自由(椿明@謎の彼女X)
これは、当代の若手実力派男性声優のリストといって差し支えなく、すでに
前からあった、”美人声優路線”と並ぶ”イケメン声優路線”でもあります。
つまり我々が、平野綾や花澤香菜のファンになる様に、女子の皆さんは、
声優さんにキャアキャア言う訳です。
知り合いのアニメ好き教師が、授業中の雑談で、
「神谷浩史の暦が」と行った所、真面目そうな女生徒が挙手して
「先生、神谷浩史さんと言ってください」と訂正を求められたという。
 
しかも我々男子は、アニメのヒロインを嫁にしたり、美人声優さんと
街角でバッタリ会って仲良くなったり(あるかそんな事(笑))する妄想は
しますが、アニメの登場人物、例えば澪ちゃんと唯ちゃんが、どうのこうの
百合な展開になる事は(そういう趣味の方もおられるが)考えません。
ところが、男性声優ファンの女子の皆様は、そういう妄想(あまり言及しません
が、セメとかウケとか、なんかボクには判らない専門用語が飛び交う)が
大好物な、いわゆる”腐った”皆さんが多い。
で、キャラ分けされた六ツ子が当代の人気声優によって演じられる。
萌えない訳がありませんや。
 
しかも、
「どうせ腐女子むけだろ」と、期待せずに試しに見た男性オタクも驚愕。
第一回から、差し替えになってDVDには収録されていない程の他アニメの
パロディぶり。もう演出も凝ってますし、脇役も凄い。
そして六ツ子のキャラ分けの鮮やかさに、往年の赤塚ファンも納得。
毎回ガラッと画調が変わってしまう。
いきなり全員女性の設定で、別にそうなった事の説明もなく、それで話を
押し切る。つまり、どの回から見ても新鮮。
でも、やはり作品がいいのは勿論ですが、やはり女子の力が凄い。
かつての視聴率なんて、1000台くらいのモニターで決める様な適当なものでなくDVD/ブルーレイ売り上げ」というはっきりした数字で圧勝してしまった。
文字通り化け物と言われた物語シリーズの終物語にダブルスコア以上の差を
つけて。
 
初回集計売り上げ8万枚超というのは、普通ではないでしょう。
CDと違い、5000円はするものが8万枚。億越えですね、売り上げ。
この作品に限っては、DVDの方がブルーレイより良く売れた。というのも、
お金のない若い世代の圧倒的な支持があった事を示します。
赤塚ファンの功績ではないのです。
かつて、私が途中で視聴打ち切りをした、なんだか普通っぽい女の子に、
突然8人のイケメン義兄が出来。みたいなのと違い、作品としてのクオリティ
の高さも、大切だったと思います。
制作者側は
「今時こんな昭和マンガ顔のキャラでいいんだろうか?」と迷ったそうですが
だからこそ良かったのでしょう。
第一作に、六ツ子達が現在に適合する為に少女マンガ的イケメンに変身する
話がありましたが、そんな小細工あざ笑う様な快進撃です。
 
もちろん、下の絵の様なタイアップも始まっています。
まだまだ、世の中お金を稼ぐ方法があるんだな。と思いました。
 
 
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