ささやか写真館


2003年11月

                題名「お元気で」

  

                                 Sanyo DSC-SX560

   おじいさんは、ずっと前からこの場所で靴磨きと修理の仕事をしてきました。
  このビルは、名前を聞けば誰でも知っている繊維メーカーの名古屋支店で、
  1階の駐車場の片隅に、会社の好意で靴修理の道具をしまわせて貰って
  雨の日と土日以外、毎日おじいさんは靴を直していました。
  ところが、この不況でメーカーが名古屋支店をたたむことになり、
  ビルは売りに出されました。
  不動産会社は、おじいさんが修理道具を置くことを断りました。

  私も今月から仕事を変わるので、最後の思い出に、靴を直して貰いました。
  幅広足の私が、はき続けて小指の所が破れてしまった靴です。
  バブリーな頃、3万5000円も出して買ったドイツ製の靴です。
  おじいさんは私に
  「直せんことはないが、ちょっと高いよ。」と言いました。
  「いくら?」と聞いたら、
  「千円」
  なんだか、急にまわりが昭和になりました。
  左右とも破れていましたので、2千円でしたが、おじいさんが縫ってくれた靴は
  またしばらく履けるようになりました。

  11月から、おじいさんは仕事を辞めてしまうのだ、と誰かが言っていました。
  別の人は、修理道具が置けなくなったので、靴磨きだけやるらしい、
  と言っています。
  どっちが本当でしょうか?
  誰か見てきてください。
  私はもう行けませんので。
  おじいさん、お元気で。

   
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