ささやか写真館


   2005年3月

                題名「よかったな」
  
     

                                    Summicron 50/2.0

   よかったな。
  おまえは兄弟でも真ん中で、なんか印象の薄い子だった。そうだなあ、覚えているのは、姉が
  「あの子は頑固な子なんだよ。」と言っていた事ぐらいかな?トイレに行くのに、絶対決まった
  道を通らないと承知せず、わざわざ回り道して行くので、毎回漏れそうでヒヤヒヤだったそうだ。
  2歳ぐらいだったかな?
  真ん中の子というのは、そういう所があるけど、自立心があって要領がいいところと、寂しがりな
  所が、同居したような子供だったな。
  そのうち、なんだかやけに勉強が出来るらしい、という話が伝わってきたな。
  地元で一番の高校に入って、何やるかと思えば卓球部に入って、なんか県大会ベスト8だかまで
  行ったそうじゃないか。
  東大行けそうなのに、最後に地元の大学にしたときは、ちょっとビックリした。やめた理由が
  「東大二次の数学は、数問しか無くて、そのときひらめかないと失敗するから。」というもの
  だったので、案外堅実な考えをする奴だと思ったよ。
  ま、お祖父ちゃんは自分の母校に進んでくれて、嬉しかったみたいだし、こんな素敵な嫁さんを
  見つけて来たんだから、あの大学にしといてよかったな。
  バイトでも凄く信頼されて、卒業の時には「なんとか社員で就職してくれないか。」と言われる
  ほどだったみたいだな。 
  お祖母ちゃんも、おまえの結婚を楽しみにしてたが、あと一歩で間に合わなくて残念だった。
  でも葬式に婚約者として参列してくれて、感謝しているだろう。

  就職も自分で決めて、やりたいことが存分に出来る凄い職場に勤められてよかったな。
  披露宴で大盛り上がりしてた同期の連中、東大・京大・東工大とかだろ?
  上司が言ってたじゃないか、「彼を面接したのは私です。我が社のために彼は絶対とらねばと
  思いました。」って。地方大学卒のお前にそこまで言うのは、決して社交辞令じゃないと思う。
  前に直接言ったが、先端の技術を開発しても、どうやって一般の人々に役立てるか?伝えるか?
  というインターフェイスが日本の技術部門には欠落している。
  そんな人間を今企業は一番必要としてるから、おまえが撰ばれたのだと思う。
  社会性の欠落した変人天才研究者も組織には必要だが、その成果をまとめ上げていくリーダー
  として、期待されているんじゃないかな?
  ま、ノーベル田中さんみたいな人生も楽しそうだが。
  とにかく、人生はこれから。順風満帆だな。奥さん大切にな。
  口だけで「愛してる。」と言ってもだめだぞ。結婚生活は。
  仕事が上手く行ってる時は、慎重にな。昔から日本には「高転びに転ぶ。」という言葉もある。
  本能寺の変の時、信長がこう言われたそうだ。

  ま、おまえの事だから大丈夫だろうと思うが、叔父さんみたいになるなよ。
                             (写真は本文とは関係ありません)


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