ささやか写真館
2004年11月
題名「スマソ」
RE-Topcor
25mm/3.5
「大須大道芸人祭」といえば、名古屋の「名古屋祭」と同じ日に開催され、お役人製の名古屋祭に対し
大須町人の心意気を示す、有名な祭である。この日を心待ちにして居られる方も多く、倹約を美徳とした
八代将軍徳川吉宗の享保の改革の真っ最中に、尾張の地に華やかな消費文化を根付かせて、吉宗の逆鱗に
触れ、蟄居させられた尾張藩主徳川徳川宗春なら、こっちの祭の方を喜んでくれると思う。
「名古屋祭」の方は、信長、秀吉、家康の「郷土三英傑行列」が有名であるが、大須のお祭りには宗春に
扮して、練り歩く行列もあっていいのではないかと思う。最近読んだ清水義範の「尾張春風伝」によると
宗春は、参勤交代のお国入りの度に、奇抜な衣装の行列で民衆の度肝を抜き、また白い牛に乗って遊郭に
乗り込んだという。こういう道中を再現して貰いたいものだ。
というわけで、久しぶりにちゃんと写真を撮ろうと思い、大須に出かけた。この祭はあちこちに出没
する大道芸人と観衆が主役であるから、もう誰にカメラを向けても構わないのである。へたにカメラを
向けると警戒される昨今、人間を撮る機会として、これはありがたい。
フィルムこそ家に転がっていたフジの「現場記録用」ネガであるが、カメラは愛機トプコンのDMに
モーターを付け、25mmと58mmを用意して地下鉄で出かけた。大須で亀仙人と待ち合わせ。最初に
撮ったのが、この1枚である。亀仙人に「ちょっと先行ってて」と言って、駆け寄ったのがこれ。
申し訳ない。この日は10月にしては暖かく、穏やかな日だったが、ここまで露出の多い方はあまり
いませんでしたので。一生懸命演じておられる大道芸人の方を差し置いて、こういう写真を載せるのは
誠に「スマソ」。←これは「2ちゃんねる」の言葉でゴメンの意味
見ている人からは「逝ってよし」の声がかかりそう。←これは「2ちゃんねる」の言葉で死ねの意味
25mm付けて、ここまで寄るのは、ふり返られないか結構不安でした。しかもシャッター押すと、
「カシャッ、クゥウィーン」とモータードライブの音がするわけで、これほどスナップに不適なカメラも
ない。ドキドキでしたが、気づかれませんでした。撮ってからふり返って確認しましたが、おそらく
日系ブラジル人の(ポルトガル系の遺伝子の強い)美しい娘さんでした。
亀仙人は呆れていましたが、彼の祭訪問と撮影の主目的は「金粉ショー」でしたので、私を非難する
資格はないと思います(笑)。
ちなみにこの写真のキモは、奥で私の行為をじっと見つめる男の存在です。
感情の赴くまま、芸術性のかけらもない写真撮影に走る自我を冷静に内省する超越精神の具現化。
というほどたいしたものではないか。
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