キョンシーSの
     ピンポンダッシュ!


  ★023 何もいいません。観なさい。

 随分のご無沙汰である。
 前の更新が昨年の7月なので、もう私は忘れられたかもしれないね。
 
 さて、今回は寡黙になります。
 みなさんに、あまり予備知識を与えたくないからです。

 この映画「嫌われ松子の一生」を観た後、
 「なんだこの駄作は!金返せ!」という方もいると思うし。
 「この映画を、観るために私は生まれてきたのかも知れない(中谷のまね)」
 という方もいるかもしれないです。
 ただ一つ言えるのは、人生の局面で、この映画の一シーンが突然浮かび、
 判らなかった部分が判って、号泣する事があるかもしれないと思います。

 私は半世紀の人生で、この映画の場面場面が除夜の鐘のように激しく
 共鳴する事が多すぎて、ほとんど瞬きもせずに見終わってしまいました。

 この監督の前作「下妻物語」の、ものすごくパワフルな面白さを期待すると
 ちょとビックリするかもしれません。
 下妻は面白かったけど、私はこれまでのこの監督の最高作品は
 「サッポロビール バーベキュー編、卓球編(豊川悦司、山崎努)」
 だと思います。
 この人の作る映像には、きわめて誇張されてリアルな嘘がある。
 天才的な詐欺師と言ってもいいでしょう。
 一部の熱狂的なカルト支持者を持つ原作(そのため、原作を先に読んだ人は
 映画に批判的)を全く別物にしあげた才能には脱帽です。
 しかも万人向きには絶対になっていない。
 原作とは別種のカルトを得ている。

 じわじわと感動がぶり返してくる。
 また観に行きたくなる。

 この映画が、韓国映画に代表される「さあ泣け」映画と違うのは、
 普通映画は、主人公に感情移入して泣けるのに、
 この映画は主人公松子に共感するのは難しい。
 「ああ馬鹿な女」と思いながらも、彼女の人生の一つ一つの
 シーンに、激しく心を揺さぶられる。
 ミュージカルの持つ「嘘臭さを見ない振りをして楽しむお約束。」
 を判った上で、どろどろした現実に対比させる。
 脇役が全員最高(例えば、あのゴリ子と同じ人とは思えない)。
 
 あまり書くと、「いや違うな。また観に行って確認せねば。」
 と思ってしまう。

 とにかく今まで観た最高の日本映画。
 「きりん。れもん。」から中谷美紀を観てきたファンには至福の時間。
 そして、観た記憶自体が、私の宝物。