キョンシーSの
     ピンポンダッシュ!


  ★022 「ビールが待ってる!」感ありありのエピソードIII

  StarWarsがいよいよ完結した。
 思えば第1作(エピソードIV)を見て、何度も映画館に足を運んだ夏から
 20年という歳月が経っている。
 StarWarsで何が驚いたかと言って、デティールの書き込みの凄さだった。
 宇宙船と言えば、ツルツルテカテカの印象があったのに、突然使い込んだ汚い宇宙船。
 なんだかずるそうな宇宙人の暗躍する酒場。そして、脇役に至るまで書き込まれた
 サイドストーリー。空中都市の映像など本当によかった。
 砂漠の民も、ヨーダの惑星も、宇宙船の中のチェスも、思い出す場面は沢山ある。
 エピソードVでは、氷の惑星、ジャバ・ザ・ハット。そしてハンソロのチョコレート。
 エピソードVIでは、ジャバ・ザ・ハットの宮殿での怪獣使い。そして森の惑星と
 イウォーク族。
 エピソードIでは、ポッドレースとジャージャーピンクスの故郷。アミダラさんの
 けったいな格好。
 エピソードIIでは、空中カーチェイス。秘密の園の美しさ、コロシアムなどが
 印象的だった。
 
 今回のエピソードIIIで、あまり印象的なシーンがない。C3POもR2D2もようやく
 登場するが、あまり活躍したとは言えない。R2D2などドロイド相手に結構派手な
 立ち回りをするが、「兵器」にしか見えない。ピョンピョン飛び回るヨーダも
 興ざめだ。チューバッカの一族も登場するが、彼らの暮らしぶりはまるで判らない。
 ちょっとでもいいからハンソロ少年が出てきても良かったのでは?
 戦闘シーンで出てくるいくつかの惑星を除けば、舞台は常に共和国の首都である。
 思い切った人間ドラマと言うわけでもない。あり得ないほど単純なトリックに
 アナキンは引っかかり、暗黒面に捕らえられる。殺されていくジェダイたちは
 まるで殉教者である。「鉄腕アトム 地上最大のロボットの巻」が浦沢直樹により
 リメイクされているが、せめてあれぐらいのプロットで、特徴のあるジェダイ
 評議会のメンバー達が殺されていくサイドストーリーがあってもよいと思った。
 まあ、アナキンは宇宙を救うためにどうしても暗黒面に落ちなければならなかった
 というストーリーの枠があるため、一本道にならざるを得ないが、それにしても
 あまりにもゆとりがない作品である。
 ルーカスもスタッフも、もう嫌になったのではないか?早く終わらせて、
 打ち上げでビールを飲みたいぜ。という感じがひしひしと伝わってくる感じ。
 
 何にもない。見終わって、なんかとてもすかすかだった。
 パドメ(アミダラ)もけったいな髪型の時は美しかったが、髪をほどいた妊婦の
 姿は、松田聖子(2005年バージョン)のようだ。
 エピソードIIの途中から、もっと書き込みをして、アナキンが否応なく暗黒面に
 捕らえられていく、シスの暗黒卿の陰謀をしっかり書いて欲しかった。
 アナキンの苦悩はシェークスピアばりの戯曲に出来たはずだ。

 大好評だったテレビシリーズが終わった数年後に「○○。その後」とか、
 「○○。2005」とか、後日談特番ドラマが作られるが、そんな感じである。
 しかも全然製作側の熱意が伝わって来ない。
 「交渉人真下正義」は踊る大走査線シリーズの後日ストーリーという意味では
 共通性が無いとは言えないが、「まだまだ面白いものが作れる」という意欲が
 見えている。
 
 ルーカスはもう映画製作の意欲を失ったのだろうか?「エピソードIII」は
 失敗作だと思う。人間の劇部分を取り直して、例えばスピルバーグに作り
 直させて欲しい。
 一緒に見た娘は「時間の制約から、かなりのシーンがカットされたのでは
 ないか?ディレクターズカットが見てみたい。」と言ったが、ルーカスは
 いっぱいいっぱいだったのではないだろうか?

 世界中のスターウォーズファンの深い失望のため息が聞こえてくる気がする。
 興行的には成功するだろうが、熱心なフリークたちにとっては、
 「ルーカス老いたり。」
 言うのは悲しいが、「ハウルの動く城」に似た感じがする。
 ルーカスはぜひ、リベンジして欲しい。
 前言を翻し、エピソードVII,VIII,IXを発表して、もう一度我々を熱狂させて
 欲しいものである。