キョンシーSの
     ピンポンダッシュ!


  ★018 没原稿シリーズ(2)某ファミリー系通販メールマガジン


 理由:主人公の女性と男性の生き様が、ファミリーにそぐわない。ヲタク文化で
   成立した社会現象は刺激的すぎ。やっぱこういうメルマガのコラムには
   インリンより白石美帆が無難。まわかってたけどさ。

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                巨きな海の片隅で

 最近なかなかテレビドラマも充実していて、とっても長〜〜く感じる一週間の中でも  
「ああ、今日はこの番組を見る日」と、メリハリ付けて過ごす事が出来、結構楽しんで
テレビを見ている私ですが、ついこの前、激しく感動、というのか、目からウロコというのか
「すげー!」とストレートに感心した番組がありました。それはドラマではなく、クイズ番組
でしたが、毎回興味ある人物を取り上げて番組を作っておられるようでした。たまたま私の
見たその回の主人公は、「フリーのグラビア・アイドル」という、ちょっと私にとっては、
奇想天外な職業の方の生活を追ったものでした。彼女は、もともとタレント事務所のような
所に所属していましたが、一人でやった方が生活が楽になる。と言う事で独立し、一人で
グラビア・アイドルをやっています。独立、と簡単に言っても、すべて一人でやる、という
事は、お仕事を貰いに雑誌編集部などに営業する事も、スケジュールを管理するマネージャー
の仕事も、スタイリストとして衣装を用意する事も(毎回買えないので、お友達と衣装の貸し
借りなどをして間に合わせるそうです)、もちろんメイクも全て一人で、と言う事ですから
並大抵の忙しさではありません。番組では、彼女の大きな収入源の一つである、「撮影会」を
追っていました。撮影スタジオをおさえ、広告を出して募集し、衣装(水着も含め)の用意も
全て一人でします。彼女には事務所所属時代からの熱心なファンが沢山いるので、フリーでも
撮影会が成立するのです。街で奇麗なおねいさんに「写真とらせて」と言っても、ひっぱた
かれるか、警察呼ばれるかですから、カメラ好きにとって「撮影会」というのは、まことに
ありがたい企画なわけです。まして相手は雑誌にも登場する「グラビア・アイドル」ですから、
ファンの方の熱意も相当なものな訳で、数十人が参加していました。屋外とスタジオで、
自由に写真を撮らせてくれて、スタジオでは水着にまでなってくれるのですから、参加者に
とっては至福の時でしょう。撮影会にかかった費用は参加者の頭割りになるようですが、
スタジオの借り賃、衣装代等引くと、彼女の最終的なギャラは丁度家賃1ヶ月分やっと払える
程度のようです(家賃6万の普通のアパートでした)。
そんな彼女が、もう一つバイト的にしているお仕事が、なんとインターネットのオークション
でした。「グラビア・アイドル○○さんと2時間デートする権利。」をオークションするの
です。もちろん危ないものではありません。場所は遊園地です。そして万一に備えて、離れて
見守るオークション主催者の派遣したガードがつきます。入場料・飲食代などは、彼女の側の
負担になります。落札したのは30代の真面目そうな(ちょっと高見盛似の)独身サラリーマン
で、撮影会の常連の人でした。3万百円(この百円という所がオークションの醍醐味ですね)
が、落札価格でした。カメラが趣味で彼女に憧れている彼にとっても、この金額は結構きつい
でしょう。でも、競り勝って本当にうれしそうでした。「人生最高の思い出の一日です。」と
語っていました。二人っきりで、お茶して、観覧車に乗って・・・。
たった2時間のアイドルとのデート。
彼はいつか孫に(いきなりの時間経過ですが)
「おじいちゃんは東京でアイドルとデートした事があるんだよ。」なんて言うのでしょうか?
彼女もいつか結婚し、小学生の娘が(なぜか娘)
「うちのママ、昔アイドルだったんだよ。」なんて友達に自慢する日が来るのでしょうか?
私が激しく感動したのは、このバーチャルデートをした二人が、それぞれ東京と言う本当に
巨大な海の中で、一生懸命生きている事でした。
一見華やかだけど、明日がわからない芸能界で必死に一人で泳いでいる彼女。
たぶん、かなり生活を切り詰めて、彼女に会える時間を楽しみに働いている彼。
東京ならではの不思議な出会いなのですが、それぞれの生活の一生懸命さが背景に感じられて
何か深い余韻を残した番組でした。
私にとっては「若いって、うらやましいなあ。」とも感じる時間でした。


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あははは、これは没だわ。30時間ぐらいかけた原稿なので、ここにのせときます。
コラムご注文賜ります。

キョンシーS