ベルーシの減り靴カメラ

 10.今欲しいデジカメ

1眼レフデジカメが全盛だ。正直言って、デジカメは銀塩にすり寄るのか決別するのか、
もうそろそろはっきりさせた方がいい。もともと1眼レフデジカメはレンズという資産を
もつ、プロ、特に報道のプロが少しでも早く写真を届けるために必要とした分野である。
かつてプロは撮ったフィルムをいかに早く現像し、新聞に掲載するかが勝負だった。
見た目がごついのは、大型のレンズをマウントで支える為であったし、ミラーとプリズム
は、「見たとおりの絵」を写すためだった。プロ>提灯評論家>えせアマチュアと、
流行は伝染し、ニコじいやキャノじいの、アイドルになった。あっというまに10万円台
になった。やっぱりいいんだろうか?600万画素の1眼レフデジカメと、600万画素の
コンパクトカメラとどっちがいいのだろうか?わからない。
いわゆる、1眼レフというレンズ交換カメラでなくても、ミラーとプリズムを使っている
高級デジカメもあるし、ファインダーに光学式の2眼レフ的ズーミングを持たせた機種も
ある。コシナはエプソンの液晶技術を借りて、レンジファインダーを甦らせた。ビデオ
カメラのようにファインダーの中に、小さな液晶を持つ物もある。いろいろ考えがある
と思うが、私はデジカメ付き携帯が、最も本道で、最先端のところにあると思う。
ライカの父、オスカー・バルナックは、身体が弱く、大判のカメラや三脚を持って歩く
ことが出来なかった。そこで彼は35mm映画フィルムを利用し、高速なシャッターと
小型なボディーで、現在の35mm銀塩カメラの基礎を作った。大砲の弾道測定技術から
発達したレンジファインダーによる、正確なピントは、全紙に拡大しても鑑賞に耐える
素晴らしいネガと紙焼きを生み出した。原点は小さい、にあった。何を撮るか?
大型カメラで三脚を使って撮るのは大自然の風景や土方歳三や坂本龍馬のポートレート
である。バルナックのライカで撮ったのは街角の猫や、通り過ぎる人々のスナップで
ある。ライカ使いが(タマちゃんのパパを別として)あまりストロボを好まないのも、
その静かなシャッターが、低速シャッターでも十分な露出を約束してぶれない事にあった
と思う。もう何百万画素とかいうのも意味が無くなってきた。200万あればHPに掲載
するには十分である。300万あれば、写真屋のデジカメプリントでサービス版なら十分
である。それ以上拡大するピントが、レンズ解像力があなたのデジカメに備わっている
のか?
私は、ライカがM3を発表した、画期的な1954年が、カメラの運命を決めたと思う。
それまでのライカに比べ、M3は大きく、重かった。完成度は恐ろしいほどで、日本の
カメラメーカーは、こぞってレンジファインダーを諦めて、1眼レフに走った。同時に
「あ、あの大きさでもいいんだ。」というお約束もできた。ブレッソンがM3で
「決定的瞬間を撮るため、ライカに黒テープを貼り付けたそうだが、確かにM3以後の
プロの使うカメラは大きくなった。一時オリンパスOM1のような小型化も流行ったが、
所詮前玉の付き出した塊では、コートのポケットに忍ばせる訳にはいかなかった。
平行して、最初はハーフカメラなどから始まった小型カメラの群が、バルナックの末裔を
支えた。35mm版になると、リコー、ミノルタ、ニコン、コンタックスなどから、プロの
サブカメラとして使える高級コンパクトカメラが登場した。コンパクトカメラの利点は
どこにでも持って行ける事である。ポケットから取り出して、気に入った風景をさっと
おさえる。「お散歩カメラ」という表現があるが、これはきわめて計画的なもので、
例えば35mm辺りを付けた1眼かライカを首から提げて持って行くのである。「とるぞ」
と言って撮るのである。コンパクトカメラの世界はもっとさりげない。「いいな」と
思った瞬間にポケットから取り出して撮っている。もっと突き詰めれば、カメラ付き携帯
である。CASIOのQV-10が出たとき、誰もそれをカメラと思わなかったので、相当好きな
物が撮れた。簡単にいうと隠し撮りである。マーシーの世界である。だからカメラ付き
携帯は大袈裟なシャッター音がするよう設計されている。本当に銀塩に追いつこうとし、
真面目に光学系から追い込んでいる大きなデジカメもある。PanasonicのLC1は、あえて
レンズ交換を捨て、28mm〜90mm相当f2.0というライカレンズの素性の良さを全面に
押しだしたフルマニュアル機である。これでファインダーが電子式でなかったら、
どうしても欲しい名器になっただろう。レンジファインダでなくていいから、せめて
2眼レフ式ファインダーにして欲しかった。でも、このカメラがエプソンがコシナの
安カメラのハウジングを使って売るMマウントレンズ交換式カメラの半値以下で買える
のである。何しろあと5万出すと、「デジルックス」というれっきとしたライカブランド
になるのだから、一度現物のファインダを覗いてみたいカメラである。
同じPanasonicから出ているFX1は手ぶれ補正で、かつてのバルナックカメラより薄い
ボディを実現し、手ぶれ補正は、出来るだけストロボを使わないロースピードの撮影を
可能にした。ポケットから取り出して、ノンファインダーで、あるいは背面の大型
ファインダーで構図を確かめるだけで撮影が可能になる。つまり片手で撮れるカメラ
なのだ。あとは色が・・・。あゆを起用し、若向きを狙ったのは判るが、この忍者カメラ
になぜ黒がないんだろう?ブレッソンばりに黒テープを貼るか、東急ハンズで革しぼ
両面テープ付きを買って、クラシックな感じにシルバーを改造かな?