ナゴヤからの手紙
 
2014年10月
 
 私の仕事は、土日が休みではありません。むしろ、土日はあまり休めない。
そういう因果な仕事ですが、10月の11、12は前々から希望休にしてもらい
ました。
8月も花火大会やら、縁日やら、極め打ちの休みを取りましたが、
10月はこの土日。
「大須町人祭」
今年で27回目になるそうで、本当に早いものです。
 
↑おいらん道中。今年はドイツ人の太夫がいたそうな

早いと言えば、こんな小咄がありました。

昔々、お日様と、お月様、そして雷様が旅をしておりました。
久しぶりに羽根を伸ばして、旅館で大宴会。ピカピカ、キラキラ、ゴロゴロと
大層な盛り上がりで、それぞれ勝手に酔いつぶれてしまい、あくる朝、
雷様が目をさますと、他の二人が居ない。
宿の番頭さんに、どこ行ったか聞いた所、
「お二人はとうに朝早くお立ちになりました」
そこで雷様、
「ああ、月日の立つのは早いもの」
番頭さんが、
「お客様はいつごろお立ちで?」
と聞くと、雷様
「わしか?わしは夕立ちじゃ」
お後がよろしいようで。

というぐらいなもんでして、27年ぐらい、あっという間でございます。
で、毎年ほとんど参加している私にとっては、もう大体の大道芸人さんは
見たことあるし、若い芸人さんの芸も大体検討がつく。
もっと楽しんでる友人などは、
「今年はジャグリングは○○。パントマイムは△△。××は伸びてきたねえ」
などと、かなりマニアックな楽しみ方をしていますが、
私なんざはいきあたりばったり。
最近は人が多すぎで、後ろの方からちょろりと覗いて、投げ銭もせずに通過。
というパティーンが多いのです。

 初期の頃は、
「人間美術館」の雪竹太郎さんの出番を追いかけ、特に彼の夕暮れすぎにやる
「アントーニオ!」という芸が大好きでした。
これはお客の一人を友人のアントーニオに見立てるという、典型的な
客いじり芸ですが、完成の粋に達している昼間の美術館に比べて、
もうアドリブ連発の即興芸で、大変面白かったです。
いかなる事情か判りかねてしまいますが(←若い人が陥りやすい、間違った
敬語)、雪竹さんが大須に来なくなり、その代わりに私が追っかけ始めたのが
「シルヴプレ」
 

この男女二人組のユニットは、息のあった真のパントマイムを見せて
くれます。
今年で大須10年目だそうですが、最初万松寺前の、比較的小さな会場で
お見かけしてから、彼らの芸を毎年必ず追うようになりました。
前身真っ白な衣装に見を包んだ彼らのパントマイムは、正統派であるだけ
でなく、極めて
「判りやすい芸」で、お年寄りもゲラゲラ笑っている。
人生にありがちな側面を鋭利なナイフで切り取った様な、完成度です。
例えば今年も横にいたおっさんが、
「これこれ、これが見たかたんだ」と感極まる様な声を上げた、つかみの
ごく短いマイム。

一仕事終えた男性に女性が優しく扇を差し出す。
感謝して扇ぐ男性。女性も自分で扇を取り出すが、突如仕事人のテーマが。
男は扇を横笛、女は三味線のばちにしてエア演奏。
男は扇を吹き矢にして女を狙撃。女はなんなく扇で受け止め、三味線屋の
勇次さんばりに、男の首を…。
なぜか女性は馬に乗り、男性の扇が、頭の上の的に(イメージは、なんか
那須与一とウイリアム・テルの合体版(笑))、女性の扇は畳まれて矢に。
男の的を射る。そして衝撃のラスト。
と、ここまで3分もない展開。なんべん見ても面白い。

前回は傑作のほまれ高い
「ペンギン」を見ることができましたが(かなり長くて、特に起伏のない話
なので、集客勝負の大道芸には、あまり向いてない)、
今年は、なんとセリフありのコント
「洗濯屋」と
「ラーメン屋」の二作を見る事が出来ました。
それぞれの仕事を精密なパントマイムで表現する技は、流石とおもいますが、
セリフの方は今ひとつの完成度に思えました。
軽妙なセリフで自分の芸を盛り上げる芸人さんは、他にも沢山いますので、
この二人がやらなくてもいいんじゃないか?と。
まあ、マンネリを突破するために色々試行錯誤するのは、この二人が、
真面目でいい芸人さんである証拠ですけど。

後、今年の大きな変化は、大須発信のロコドル
「OSU」が完全にブレイクしていたこと。
確か二年前にまねき猫の広場で見た時は、なんかマイナーなかほりに溢れ、
掛け声をかけるファンも一人(オタク風なおっさん)しかおらず、なにか
「アイドルのまねをしてうけを狙うが滑ってしまった、痛い女大道芸人
(このジャンルではキンタローが完全にブレイクしましたが)」あるいは、
「学園祭だから、仲の良い子同士で、講堂ではじけちゃお、キャハ!」
的前津中学(大須の学区)同級生。みたいに思ったのですが、
今回はうるさいぐらいの沢山なファンのかけ声。それも女性も結構いた。
もうその一角だけ、大道芸人祭りではなく本当に営業になっていたのですが、
私はこれ、いいと思う。だってここは大道芸人まつりじゃなく、
「町人祭り」なんですよね。
大道芸人を本当に見たいなら、かの静岡の
「大道芸ワールドカップ(10/31〜11/3)」の方が凄い芸に会えると思います。
ここはもっとのんびり、素人の飛び入り芸大会とかやるといいなあ。


 
あとは今回駆け足でみた中では、
ジャグリングの天平(名古屋出身)はなかなかの成長株。
パントマイムだと山本光洋のなんか味のある芸が良かった。
でシルヴプレですが、チラシを置いていて、なんと11/15に豊橋でやるらしい。
というわけで、投げ銭渡しながら、女性の方(当然そちらに行く(笑)堀江のぞみ
さんとおっしゃいます)に
「なんとかやりくりして、豊橋いきまっす!」と約束してしまいました。

実は昨年と同じく、旧豊山小学校校舎(滋賀県。けいおんの舞台)にお参りし
京都(たまこマーケットのモデルになった京都市の出町桝形商店街)に
初巡礼しようと画策(11/11。中野梓様誕生日(笑))していたのですが、
速攻で予定変更しました。京都で級友とランチしようかとおもったのですが、
友よすまぬ。余は旧き友情より、目先の娯楽を選択したのであった(汗)。
 
というわけで、来月のこのコラムは、
「豊橋からの手紙」に確定しました。まあ名鉄かJRで行ってもいいけど、
天気が良ければ、またカブで行くつもりです。
「B1グランプリ」以来だなあ。
おらワクワクしてきたぞ。