ナゴヤからの手紙
 
2017年4月
 
「この街」
 
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この間誕生日ですので、満63歳の私ですが、大学に4年間通った時期を
除けばずっと名古屋に住んでいる訳ですから、そろそろ名古屋在住60周年
なわけです。別に嬉しくはありませんが(笑)。
 
で、この街についてつくづく思うのですが、この街の人の特徴は、私含め
「調子に乗りやすい」と言う事じゃないかと思うんです。
あと見栄っ張りと言うのもありますね。
普段はケチだと言われる県民性ですが、娘が嫁に行くとなると、どこよりも
豪華な嫁入り道具をあつらえなければ気が済まない。みたいな。
悪名高い”名古屋走り”と言われる荒っぽい運転(する人は僅かですが目立つ)も
車降りると案外おとなしいお兄ちゃんで、車に乗ると人格変わる。感じ。
とにかく”ハレ”の時には張り切ってしまうのがナゴヤ人で、そういう意味では
確かに
「調子に乗りやすい」性格です。
最近市長選があり、現職の河村たかし氏が再選されましたが、この人の市政も
ハデですね。
支出を抑えるため市長含め減給するとか、やることはやっているのですが、
名古屋城に関することになると、異常にハッスルする傾向があります。
まあ、市長としては後々、
「俺が市長の時にアレをやった!」と言いたい事が欲しいでしょうし、彼が
最初に参院選に立候補したときのキャッチフレーズ
「総理を狙う男(このため首相警備のSPが増えたという(嘘))」をまだ
信奉しているなら、名古屋で派手な花火を打ち上げて、国政に戻る土産に
したいのかもしれません。
まともかく、名古屋城には熱心な殿様もとい市長ですが、名古屋人としては、
「名古屋城ねえ…。はあ、まあ財政破綻させなきゃ結構なことだわねえ」
程度の感想が多いのではないかと思います。そもそもナゴヤ人の名古屋城への
思いは、例えば他県人に名古屋城の事を聞かれても、
「はぁ。まあ昔から”尾張名古屋は城でもつ”というでねえ。でも空襲で焼けて
まって、いまじゃコンクリのビルですわ(笑)」くらいでしょうかね。
名古屋人が名古屋城に行く事も、よっぽど行事の時以外はありませんし、
歴史的には隣の愛知県体育館(日中国交回復の発端となった国際卓球大会が
開催された。今は大相撲名古屋場所が開催される)の方が良く行くくらい。
人が名古屋に遊びにきてもあまり連れて行かないガッカリ名所です
(行くとしたら、水族館とJR鉄道記念館、あとはさつきとメイの家か)。
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本丸御殿に続いて天守閣の戦前の木造建築に回収するとぶちあげたとき、
私の感想は
「そっち先だろ常考」でした。国宝姫路城のステイタスに比べ、名古屋城の
価値は、精々再建された金のしゃちほこだけで、城としては、熊本城、彦根城
さらに県内の犬山城にもかなわない鉄筋コンクリートのハリボテとして、
大阪城と傷をなめ合う仲ですので。
「今更新しい城を木で作っても意味ない」とおっしゃる諸兄もおられましょう
が、文化保護の観点から言えば、このような巨大プロジェクトを自治体が
立ち上げる事で、伝統的な宮大工、御殿大工の技術が、後世に継承される
文化的メリットは計り知れない物があります。
というわけで、私はこの再建には反対ではないのですが、
発想の根本にあるナゴヤ人の
「ハデ好き、お祭り好き」はとても興味深いです。
 
最初は乗り気でなかったイベントに、最後は熱中してしまうというナゴヤ人の
性格が、一番現れたのが2005年の愛 地球博で、地方博が軒並み惨憺たる
大失敗に終わる中、入場者数目標1500万人を軽々と超える2204万9544人と
言う大成功を納めたのですが、実は入場者の大半が愛知を含む東海三県在住者
だったと言われています。
開催の賛助を多くの地元企業にお願いする(切符買って!)
→企業仕方なく大量の切符を買い、社員にバラまく
→社員乗り気じゃないが、話の種に見に行ってハマる
→リピーター続出。10回以上行った人が続出。
と言う感じですね。
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このイベントでナゴヤ人は、ハデ好き、お祭り好きの血を自覚。ついでに
並んで待つ事への耐性を取得しました。
 
結局この血が、ナゴヤ人の
「調子に乗りやすい」という性格を生み出しています。
ようやく本題に戻りますが(長い(笑))、ナゴヤ独特の食文化。いわゆる
「ナゴヤ飯」と言われるモノについても、この事が現れます。
 
「秘密のケンミンshow」で
「名古屋では、喫茶店でトーストにあんこをつけて食べるのが基本」と
紹介されれば、それまで小倉トーストのなかった店でもメニューに取り入れ
(菓子パンの”小倉ネオマーガリン”はメジャーだが、小倉トーストはかつては
名古屋人でも敬遠する人が多かったイロモノ)、
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「名古屋人にはエビフライがごちそう」と言われれば、なんか昔から名古屋の
外食の王はエビフライみたいな気がする←んなこたない
(海老が好きなのは事実だが、それは日本共通だろう。タモリ以前は円頓寺に
昔からの巨大エビフライの店があり、知多の師崎にマルハ食堂という、家族で
海へ行ったり、デートコース:特にお見合いの相手と行く事多(笑)、昔結活中だった女友達が”もうエビフライいいから!”と言ってた…。程度)
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もとある店のまかないだった”ひつまぶし”が流行ると、市中殆どの鰻屋が
元禄時代から、うちやってました。みたいな顔してる。
(名古屋では昔から鰻釜飯が有名。後で出汁をかける手法はここからパクって
いる。手間をかけて炊き上げるうな釜に比べて、温度で劣るひつまぶしが
旨い訳がない。でも客が煩いので、ひつまぶしをやらざるを得ない)
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みそおでんや、どて煮と一緒に揚げ物もだす居酒屋で、客が悪食アソビで
甘い味噌を付けた事から始まったみそかつが、大きい顔してる。
(典型的な串カツ屋であった”矢場とん”も今はみそかつ元祖の顔してる。
この店は、ユーミンが名古屋のFM番組収録時にスタッフに連れて行かれ、
そののちゲストのミュージシャンも良く行ったが、店員の来てるレトロな
豚横綱Tシャツが気に入ったある人が、無理矢理買い取って東京で着た事から
有名になった。ゲテモノとして同時に広まったのがみそかつ)
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最近は、やはりケンミンShowで、カレー煮込みが取り上げられ、ブームらしい
これは何十年も前に、中区の名店の隠れメニューとして地元局で紹介され
私も行った事がありましたが、まあ中々結構な物です。
ケンミンShowの取材不足だと思いますが、特にカレー煮込みと味噌煮込みは
レシピに違いはないと思います。味噌煮込みは凄く濃い鰹ダシ+八丁味噌の
コク+茹でない手打ち麺の小麦粉のとろみ、で出来ていますから、あとは
肉を鶏から豚肉に替え、カレー粉を投入するだけで立派な和風カレーに
なるのです。
これも、メニューに入れる味噌煮込み店が増えています。
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ハデ好きで調子に乗りやすいナゴヤ商法が、次に目をつけているのが、なんと
「コーヒーにあんこを入れる」です。
頼む、やめて欲しい!
某SNSで、昔からファンの漫画家さんのフォローしているのですが、
「名古屋に行ったら、コーヒーにあんこが入ってた」と書いてあり、他の人が
「きっとコメダあたりが」みたいにレスしてたので、
「まさかコメダはやらんでしょう。一応名古屋コーヒーの専門店なので」
と書いたのです。コメダ、コンパルが通称
「泥みたいな」濃〜い名古屋コーヒーの二大巨頭ですからね。
ところが、先日今度のイベントの打ち合わせで、コメダに行ったところ
「小倉小町」だってさ。
まあミルクに入れるとかのバリエーションの一つとして、コーヒーにあんこを
入れるという趣向で、しかもコメダは一番下にあんこ、中間がミルク、
一番上の大半がアイスコーヒーというもの。ホットもありますが、
下に小さく。やっぱ懐疑的だろうねえ。
 
で、表題のこのアイス版ですが、正直タピオカ入りのアイスティとあまり
変わらない。
細長いグラスに氷とともに入っているので、長いスプーンでどんだけ
かき回しても小豆の粒は上に上がってこない。というかスプーンでも
氷が邪魔で上がってこないので、結局太いストローでスポスポ一粒づつ
吸い上げるしかない。
このやり方は、あのぐにゃっとしたタピオカが上がって来るから楽しいので、
粒あんが上がってきても…。
結局少しあんこの甘みのついたミルクコーヒーでした。
まあ、これを飲んでこの件へのコメダのやる気のなさがはっきりして
むしろ安心しました。これまともな喫茶店が出しちゃだめだろ。
こんなもの出すなら、モーニングにあんトースト選べた方がいい
(名古屋の無料モーニングは、基本縦半分の厚切りトーストとゆで卵で
マーガリンかジャムかを選ぶシステムだが、最近選択肢にあんこも加わる店が多くなった。これなら”選ばない権利”を行使出来るのでいいと思う)
 
他県在住の名古屋出身者のみなさん。アホなメディアがそろそろ取り上げると
思うので、人から
「名古屋ではコーヒーにあんこ入れるんだって?」と聞かれたら、
「仕掛人が居る様ですが、さすがにあんこは別の方がいいと思います。
流行りませんよ」とお応えください。
 
それでも調子のって踊っちゃうのがナゴヤ人なんだけど。
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心配。