ナゴヤからの手紙
 
2019年9月
「絶対のオススメ」

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アニメなんて、子供の頃にしか見てないという大人でも、
「となりのトトロ」
「千と千尋の神隠し」や
「君の名は」を見に行かれた方は多いと思います。でも、
発表の舞台が主に深夜放送アニメだったために
「涼宮ハルヒの憂鬱」や
「けいおん!」は、社会現象としては知っていても、実際には見た事はない。
とおっしゃる方も多いでしょう。

この度、残忍なテロ事件の標的となり、替えようのない中心であった監督や
それぞれの分野の第一人者、会社を支える大切な人材、そして若い才能、
中にはようやく夢が叶ってこの春入社された方まで、35人の命を奪われた
京都アニメーションという制作会社の作品を、一度もご覧になっていない方も
多いかと思います。

しかしこの会社の作品が、毎週放送で10-12話を短時間に製作しなければ
ならない定めのTVアニメでさえ、他社の追従を許さないクオリティである
事は、世界中のアニメファンが認識しており、
その真摯で絶対に手を抜かない製作姿勢、そしてアニメーション制作会社に
よくある、低賃金でブラックな雇用形態とはかけ離れた、正社員雇用主義で
アニメーターを社内で育成して行くやり方に深い尊敬を集めて来た事は、
例えば事件発生直後、まだ“数人の死傷者がいる模様”という時期に、
一番速く声明を出したのが、フランス大使館であった事からも明らかです。
外国はこの企業を現代日本の最も重要な文化輸出の頂点と見ており、
それは一般的な日本人の認識からはかけ離れています。

さて現在公開中の
「ヴァイオレット エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動書記人形-」は、
京都アニメーションが長い時間をかけて作りあげた映画作品。
つまりジブリや新開誠と同じ土俵で競う、映画版アニメーションです。

ヴァイオレット エヴァーガーデンは、数年前に12話(+TV未放送1話)の
京都アニメーションが募集したコンテストの唯一の大賞作品という
小説原作のアニメ作品で、その美しい作画と切ないストーリー、
演出の素晴らしさで、京アニ作品ベスト3に入ると評価する人が多い作品
ですが、映画となれば更に多くのスタッフ、大変な準備をかけて、
事件の前には完成して、9月の公開を待っていました。
スタッフは平行して来春公開のTVシリーズの続編
「劇場版ヴァイオレット エヴァーガーデン」も製作中で、そのデータは
別スタジオで製作されていたり、今回のスタジオのデータも、厳重なサーバ
管理のおかけでほぼ無傷だったために、予定通り来春公開と言われていました
が、諸事情で延期になりました。
いつまでもお待ちしますので、納得の行く完成を願います。

この作品は、第二次大戦前のヨーロッパに似た仮想世界が舞台。
孤児が軍に引き取られ、殺人兵器として育てられた後に両腕を失って退役した
少女ヴァイオレットが、精巧な義手を使ってドール(自動書記人形)と言われる、
手紙の代筆の仕事につき、何人もの恋人達や夫婦、親子の愛に触れる中から、
命令に従って人を殺すだけの冷酷な殺人機械から次第に人間らしい心
(特に一人だけ自分を人間扱いしてくれた亡き上官への愛)を育んで行くと言う
ストーリーで、時系列順にストーリーが展開するため、
続編はその後のヴァイオレット。
外伝はTVシリーズのおそらく後期のヴァイオレットを描いています。

外伝は9/6から9/26と言う限定公開。そして公開映画館も非常に少ない
(名古屋市にして二館のみ!)
と言う公開形態は極めて異色ですが、これは事件前から決まっていました
(事件後、追悼の意味で入場者が多くなると予測して公開が1週間延長)。

私は公開数日後の昼勤後で夜勤バイト前と言う、なかなかハードな
スケジュールでみよし市の映画館にレイトショーで行って来ましたが、
ほぼ満席。
内容はもちろん満足度No.1と言う評判に違わぬ作品でしたが、
生まれて初めての体験として、上映が始まってエンドロールが消えるまで、
誰も物音を立てない。
完全な沈黙の中で鑑賞出来ました。全員がこの作品を見るために時間を割き、
遠方を物ともせず集まって、一瞬も見落とすまいと集中しておられるのかが
よくわかります。

そして作品もその人々の熱い耳目に充分応える、どの一シーンの静止画も
印刷すれば充分絵画作品足りうる作画、TVシリーズのキャストに加え、
完璧なゲスト声優陣。
そして美しく切ない音楽(ヴァイオレット エヴァーガーデンのBGMは
オーケストラの演奏会が行われる完成度)。
全てに満足な時間でした。

監督の強い希望で、普通はクレジットされない、少しだけ手伝った
サポートメンバー(亡くなった若い方が含まれる)のロールが流れる時は
勿論ですが、作中でも何度か涙が出てしまいました。
割引でも1200円と言う鑑賞料金は、今の私には贅沢ですが、終了までに
もう一度見に行く予定です。

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