ナゴヤからの手紙
 
2017年5月
 
「ギフからの贈り物(ギフト フロム ギフ、なんちて)」
 
                     今回は全てiPhone7plus
 
私は、らぐほのえりか師匠が連載している、pixivコミックのお気入り漫画を
チェックするのを楽しみにしております。
「おじさんとマシュマロ」とか
「悟りパパ」とか
「女子高生の生態図鑑」とか
「山と食欲と私」とかが好きですね。
師匠の
「ちかのこ」以外だと。
 
                     資料映像
最近で気になったのは、
「ミュージアムの女(宇佐江みつこ)」という作品。
これは美術館の部屋の隅に座っている人。
絵に触ったり、写真撮ったり、騒いだり、暴れたり(これはいないか)
しないように、まあ言うたら監視係ですが、客に質問されれば、解説もする
という、なかなか大事な役の話です。
現在50話まで来て、美術館のTwitterで連載されていたのが、評判になり、
pixivにも連載が始まったと
顔が猫というのは、以前から古代エジプトの猫神バステトだとか、
ますむらひろしの”アタゴオル物語(アニメの銀河鉄道の夜もこの人の絵)”
とか、よくあるといえば言えるのですが、この方の猫顔は本当に働く女性の
顔なんですね。
主人公の女性は、高校時代にこの美術館を訪れ、結局上の絵のように
就職した人で、まあ作者なんですね。
 
面白い、面白いと読んでましたら、プロフィールを見てびっくり。
なんと岐阜県立美術館にお勤めというじゃありませんか。
岐阜といえば、バイクで豊郷に行く途中。まあ名古屋からはほんのお隣。
しかも、前の職場の同僚が住んでいる町なんですね。
Facebookとかでは、時々連絡とりあってたんですが、もう何年も会ってない。
で、メールしてみたら、たまたま空いてるというので、お昼食べることに
しました。
「どっか岐阜で、これ!という安い!お店ない?」
「そうですねえ。更科かな?」
ちょっと意外でした。更科と言えば、日本三大蕎麦店系列の一つ。
ちなみに後の2つは藪と砂場です。藪は江戸の蕎麦屋で竹藪がとなりに
あったため、
「どうだい、蕎麦でもたぐってくかい?」
「いいねえ、どこ?」
「そうだねえ、あの藪んとこ」
みたいに江戸っ子に愛された店で、黒いごっつい蕎麦が売り。
砂場は大阪系で、大阪城築城のおり、砂を大量に置いてあった場所が
地名になり店名に(江戸中期までは細長い蕎麦はなかったので、大阪城作った人夫さんが食べた蕎麦というわけではない)。
そして更科は、信州高遠藩主であった名君保科正之(二代将軍秀忠のご落胤。
徳川に忠義を立て生涯徳川・松平姓を名乗らなかった。子孫は会津松平家と
なる)から名を拝借したさらし屋さんが江戸で始めた蕎麦屋で(今でいう
リスペクトですね)、外側の皮を剥いだ白いそば粉で、細めのすっきりした
蕎麦が特徴。
ただ、ネットで調べると岐阜市の更科は、大阪で修行しており、大阪には
道頓堀と新世界に更科という名店があり、東京の更科とは系統が違うらしい。
名古屋の味噌煮込み屋もそうですが、なぜか麺類屋は、本家・元祖争いが
必ずありますね。
で、そこは旨い!というので、そこにしました。
 
 
渋滞でちょっと遅れながらも、12時回って到着。店頭に友人が並んでました。
「しまった。私が遅れたせいで、並んで待つことになるのか!」とお詫び
しようとしたところ
「平気平気」列はするすると店に吸い込まれて行きます。
「ここ、注文して30秒で蕎麦がでてくるんですわ」
時代劇に出てきそうな長机に座り(ちなみに樽に腰掛けるスタイルは
時代劇の創作で、江戸期はあぐらで座るのが常識)、注文します。
おすすめの
「冷やしたぬき蕎麦」を
 
 
あはは、本当に30秒で出てきました。
蕎麦は、更科系というより、藪系の黒い太い蕎麦。でも弾力が全然違う!
江戸の蕎麦屋は、蕎麦粉の割合が多いほど良しとされ、二八(小麦粉2、そば粉8)とか、
十割とか、そういうのが自慢で、自然食感はぼそっとしがちです。
ここの店主は地元のテレビにも出る有名人らしいのですが、
うちのは冷やしたぬきに一番あった配合で、小麦粉はもっと多くしている」と公言している
そうです。小麦粉グルテンの弾力が心地よい蕎麦でした。大変結構。
 
 
「トリプルでもいけるんちゃう?」と言われましたが、ダブルにしとき
ました。
それでも、多すぎました。今度は友人の頼んだ、シングルのあいもり
(うどんもうまそう)にしようと思います。とにかくあっという間に来て、
みんなさっさと帰るので、回転が早い早い。ダブル770円。安いっ!
蕎麦湯を注文すると魔法瓶がでんと。この蕎麦湯がまた濃くて美味しいです。
最後に、流石の日本でも初めて経験しましたが、カウンターでのお支払いは
自己申告。
トリプルを頼んでシングル料金払っても、わからないわけで、
まあ美味しい蕎麦食べて、そんな卑しい真似する奴はおらんだろ?
というスタンスです。あっぱれ!
Youtbeに外国人が動画投稿して”パンドラの憂鬱”あたりで、
「これだから日本人の民度は恐ろしく高い」とか賞賛のレスがいっぱい
付きそうなノリ。
絶対また来ようと思います。
 
 
土日は家族客で賑わい、平日は近くの県庁や市役所や企業の人がお昼を食べる。
そんな名店で、どうも岐阜では知らない人はいないらしいです。
また来よう。
こんなロードレーサーカップルも、お蕎麦食べに来てました。
素敵ですね。と素直に言える(ステキじゃなくて素敵ね(笑))。
 
 
友人は時間がなくて、美術館には行けませんでしたが、近くにできた
図書館のテラスで懐かしい昔話を30分ほど。
この図書館前の広い駐車場に、市役所の新庁舎が経つそうで、今
岐阜市民のあいだでは、反対運動まではいきませんが、
”イベントとかにも使う広場的な駐車場なのに、やだねえ”
と話題になってるそうです。
豊郷小学校もそうでしたが、行政ってどうも新しい箱モノ造りたがる
傾向がありますね。
 
で、友人とは再会を約して私は美術館に向かいます。
美術館は岐阜市の反対側、って感じです。
途中JR岐阜駅前を通ったのですが、なんか黄色っぽい巨大な像が…。
「なんかでっかい岐阜のゆるキャラ?」と思ったら、
究極のきつキャラでした(笑)。
 
             資料映像
黄金の織田信長像!
市井120年を記念して、寄付で作られたそうで、信長公もまさか450年後に
金粉ショーみたいになるとは思わなかったのでは?と思います。
今年は、信長公が斎藤氏を追い出して、稲葉山城に入り、ここを岐阜
(なんか中国の地名からとった合成漢語らしい)と名付けてから
450年だそうです。
かくして、日本三大書けない県名ベスト3のトップを2位以下(新潟、鳥取)
大きく引き離して独走中の岐阜県が誕生!というわけですね(笑)。
私、302号線(環状線)から清洲にでて、そこから22号線→21号線をへて
8号線で豊郷に行く。
というのが定番なのですが、まさに清洲に生まれた信長が、小牧から岐阜に
入り、ここを上洛の拠点にしたのはよくわかります。
濃尾平野から岐阜をへて大垣を抜け、垂井町辺りまでは、平坦な道のり、
そこから不破の関まで山道を登ると、すぐ関ヶ原。米原も平坦で、
石田三成が後に居城にした佐和山を抜ければ、あっと言う間に彦根です。
そこからは琵琶湖畔を一気に京都へ。
つまり、険しい坂道が数箇所しかないのです。
この交通の要所で、しかも堅牢な山城の稲葉山城(岐阜城)。
さすが信長公ですね。
 
岐阜市民の信長愛は相当深いようで、安土城を琵琶湖畔に建設するまでの
12年間で、すっかり
「織田信長公は岐阜のもの」扱いのようです。
まあ名古屋人のいう郷土三英傑のうち、徳川家康は岡崎市ですから、
秀吉だけがナゴヤ人ということですか。
という金の信長公の背中だけ拝見して、迷いながら美術館へ。
 
 
これが、外見です。美術館というと、著名な建築家が腕によりをかけて、
へんてこな建物を作る傾向がありますが(先ほどの図書館の内装にやや
その傾向が)、ここはシンプル、オーソドックス
「展示作品が全て」という姿勢には好感が持てます。
その代わり、表題写真にあるとおり、庭の風景の美しさは特筆モノ。
借景という言葉が造園にはありますが、空や雲まで借景に取り込むことが
計算されている庭、
しかも西洋庭園や日本庭園ではなく、無機質な石造りで。
というのは見事です。
ちなみに表題の左側の小屋のようなものは、今回の展示作品です。
 
                   資料映像
 
表題写真の左側の小屋のようなものの前に、小さく監視係の方がいらっしゃる
のが判るでしょうか?
この人が宇佐江先生かと思い、声をかけたら、最初は何の話かわからない
様子。
「あ!ミュージアムの女の!ちょっと見てきますね」とわざわざ館内に
駆け込み、また走ってきて、
「今日出勤してますよ!常設展の方です」と教えてくれました。
建物に入ると、左が常設展、右が企画展で、常設展は有料
(といっても330円)、企画展は無料という、普通とは逆な感じ。
常設展の料金所付近まで、宇佐江先生はわざわざ出てきてくださいました。
もちろん猫の被り物は被ってないです(笑)。
さすがに写真はお願いできませんでしたので、印象を申しますと、
小柄で、なんか上の猫の人に面影が似た、ポニーテールの方でした。
作品にもあるので、言ってもいいでしょうが、美大出で30代の落ち着いた
女性で、帰りにちょっと一杯と、一人で立ち寄って美味しいもの食べそうな
 
  資料映像
 
「ワカコ酒」の主人公っぽい方でした。聞きたかったこと
「どうして顔を猫にしたのですか?エジプトの?ますむらひろし?」と
聞いたところ、猫にしたのは、単に猫が好きということと、
人間の顔のままだと、同僚の姿を描いた時、いろいろ差し障りがある。
ということだそうです。
普通の職員さんですから、気を使うことも多いのでしょうね。
本人にお会いして、ますますこの作品のファンになりました。
上の絵のように、Twitter岐阜県美術館公式での投稿は50話で終了し
、後はpixivで発表すること。
なんと早くも書籍化されること。
本当にめでたいです。まあ二足のわらじではあるのでしょうが、
美術館に行って、先生を呼んでもらったりするのは、もうできなくなる
かもですね。お会いできてよかった。
 
常設展では、途中で先生が立っておられて仕事しておられました!
椅子には座ってなかったです。結構作品について、訪問客に問いあわせられる
ことが多いので、
余り座ってばかりはいられないようです。
常設展は、岐阜県出身の作家の展示でした。
あと、所蔵の洋画も一部。それとオーストラリア先住民アボリジニの芸術
(これすごい!)
この美術館は、ルノアールなんかもあるようですが、
ルドンというモノクロ基調の作家の所蔵でも有名です。手堅く集めてる感じ。
 
県民性として、岐阜は堅実、愛知は派手(金の秀吉像はないですが(笑))
のイメージですが、
名古屋市美術館は、開館の際、一部市民の反対を押し切って数億を投じ、
当時モディリアニの作品でもそれほどメジャーではなかった
”お下げ髪の少女”を購入しました。
今では美術の教科書にも載ってる(日本の美術教科書は版権の関係で、
日本の美術館所蔵作品を掲載する傾向がある)名作ですが、
まああの可憐さに、私始め名古屋市民達が惚れ(当時萌えはまだ(笑))、
「まあ市バス料金一人二回分なら出してもええんでにゃあ?」
(名古屋は人口200万)
という感じだったので、今も全国からあの子に会いに来るわけなんですね。
 
岐阜県美術館も、そういうシンボル的なものがあるといいのに。
とか思ってしまいました。
あ!
「ミュージアムの女」か。
これを題材に、著名画家、イラストレーター、漫画家に連作展で書いて
もらったら?
とか思ってしましました。
「絵画の横に座る監視役の女性」というお題で、現代の作家の渾身の作品。
もちろん信長繋がりで、清洲の生んだ天才、鳥山明先生にもお願いしたら?
あと、ピカソ風、ゴッホ風、モディリアニ風、浮世絵風とかのパロディも
いいですね(笑)。
 
 
先生にお別れして、今度は企画展の方へ。
入場無料。フラッシュ焚かなければ撮影自由。という珍しい展覧会。
この企画展は、若い作家さんの公募展みたいで、実に面白かったです。
上のはなんか吉田戦車が描く火星みたい。
あの火星田マチ子が出てくるやつね。
まあこの辺までは抽象作品として、予想の範囲内でしたが…。
 
 
 
 
 
これだよ!おびただしい虫。それが全ていわゆるガラクタでできている。
すごい執念だ。
 
 
アップ。カスタネットの虫とかちょっと欲しかった。
これ、一匹ずつ作品として売ればいいのに。と思ったら、
ミュージアムショップにちゃんとありました。一体1万円となってました。
買う人いるかな?でもお金あったら買いたい。
 
 
これも、なかなかすごい。なんか死んでます。
先生とは別の監視役の方が近寄ってきて、
「じつはねえ。これ動くんですよ」
なんか閉館後動いてた!みたいな怪談かと思ったら、なんと本当に
時々駆動するそうで、確かにしばらく見てたらもそもそ動きました。
なんか気味が悪くて通り過ぎるところ、結構なものを見せていただいた
お礼に、最近の私の最大のトラウマ、”エベレストで遭難して、降ろせないので、そのままミイラ化しオブジェとか目印になってる高名な登山家たちの
死体の写真”。全部素性・死因が分かってるのが怖い。
女性登山家が登頂成功後、はしゃぎすぎて長く居すぎて遭難。とかね。
の話をさりげなく
「連想してしまいました」と話しておきました。
職業柄好奇心は旺盛でしょうから、きっと検索してトラウマになった
ことでしょう(意地悪(笑))。
良い子のみんな、絶対検索しちゃダメだよ!
 
 
なんか生きてる。
「伝説の動物である一角獣を骨格、内臓から再現」だそうで、
これは動かないそうですが実にリアル。こういうの好きです。
家に置きたくはないけど。
 
 
最後は、私も中学生の頃作ろうかと思った作品。
リコーダーでパイプオルガンを作る。という。
実際に音が出て演奏してます。
実は、この向かい側には、本物のパイプオルガンもあり、美術館に置かれた
パイプオルガンとしては、日本初だそうです。
そういえば、辻オルガンは岐阜県だったね。
 
あと、靴脱いでアスファルトの感触を素足で確かめる。というだけの作品が
ありました。
「いいんだ、分かってくれなくて」感満載でイイですね(笑)。
 
ART AWARD IN THE CUBE 2017 “清流の国ぎふ芸術祭” 身体のゆくえ
という長い名前の展覧会です。6月11日まで。
 
               資料映像
 
ちなみに6/12~19までは休館だそう。
公式HPのカレンダーでは猫娘さん、旅行かばん持って、
休館中は、旅に出る気満々みたいです(笑)。
 
 
外にもこんないい作品が。自称アート都市な名古屋のあちこちにごろごろ
している邪魔な抽象立体作品より、よっぽどすっきりしてるぜ。
 
 
なんかジブリっぽいもの発見(笑)。上のもですが、岐阜も陶芸系が
頑張ってるみたいです。
 
 
たぶんお子さんたちと作ったんでしょうが、木の名札も可愛くていいですね。
ここの学芸員さんはセンスあるなあと思います。
だから”ミュージアムの女”という快作が世に出たのでしょうね。
 
 
最後に、この感動をお伝えできないのが残念ですが(感動しすぎて写真、
動画撮るの忘れた)
表題にも小さく写っていた、この作品の前の監視係のお姉さん(来る時
あった方)が坂道の向こうをじっと見つめる図。
なにがあったかというと、この数十秒前、
この坂道を白い服を着た髪の長い幼女が、たーーーっと走って行ったのです。
お姉さんは、転ぶのが心配で見つめてたんだと思いますが、私はこの対比が、
なんだかこの世のものとは思えず(怪談じゃないよファンタジックな
妖精的なそれ)、感動しました。
きっと動画に撮ってても、この感動は再現できないでしょう。
まあ現実は幼女の向こうには、ハンドル付き三輪車をおしたお父さんが
いたのですが、無論そんなものは見えなかった(笑)。
 
ちなみにこのおねえさん(綺麗系)に、
「一日中外で大変ですね。雨の日はどうするのですか?」と聞いたところ。
「軒下に立っていて、作品の前で聞きたそうな方がおられたら、
走ってきて説明します」
とのこと。
岐阜県民、偉いっ!
ぜひ息子の嫁に(笑)。