ナゴヤからの手紙
 
2017年3月

「季節感と戦争と」


                   Tokina AF19-35/3.5-4.5

毎年、この季節がくると
「ああ、今年も生きてて良かった」と思うのです。
2月下旬からの名古屋市農業センター、
「しだれ梅まつり」
沢山の梅の木が一斉に開花する光景は美しく、
名古屋では有名な名所です。
普段は(入場無料のため)近隣のお母さんたちが、子供とのんびり過ごす
公園ですが、この約2週間は土日はもとより、平日でも大勢のかたが
詰めかけ、駐車場も有料になるなど大盛況です。おそらくこの2週間の
入場者数は、通常の3か月分よりも多いのではないかと。
さて、今回も梅の開花にあわせて何度か行ってきましたが、最後は春分の日に
行きました。
休日は運動不足になりがちなので、歩いて出かけました。
普通名古屋市民は車で行くか(大渋滞)、地下鉄で行きます。
地下鉄平針駅から、20分ほど歩いていくのですが、地元住民は裏道を
知っています。


           Tokina AF19-35/3.5-4.5

氏神である針名神社裏参道から回る、裏口。
こちらが散歩道としてはなかなかいい。
針名神社は、調べてみると結構格式が高い神社で、尾張氏の三河地方への
開拓のフロンティアであったことが窺える神社なのですが、
私が初めてここに引っ越してきた時には、本当に深い森の中の小さな社
でした。それなりに子供心になんか感動した覚えがあります。
のちに結構木を切って、社を立て直して、沢山の方が参拝したり神前結婚式を
あげられるようにしましたので、今は木の数は随分へりました。


           Tokina AF19-35/3.5-4.5

ただ社の正面からまっすぐ南に進み、階段を上がっていく裏参道は、
未だに当時の森の中の神社の面影を残しており、私の好きな場所です。
この参道の上りきったところの鳥居の外に、農業センター裏口に向かう道が
あるのは、流石に地元民しか知らないと思いますが、この散歩道は
私のお気に入りです。


          Tokina AF19-35/3.5-4.5




          Tokina AF19-35/3.5-4.5

さて3月も中旬過ぎ、今年もしだれ梅は満開です。
朝一番に向かったのですが、もう沢山の人。
普段はない屋台’(最近のは自動車が多い)も出ております。
まずは北海道名物ザンギをいただく。美味なり。
ザンギとは、予め醤油系の下味をしっかりとしみ込ませた鶏肉にあっさりと
粉(小麦粉?片栗粉?北海道だから片栗粉かな?)をまぶして揚げる。
我が家の唐揚げもこっちにシフト中です。カロリー抑えられるので。
↑唐揚げは粉の分量が少ない程しみ込む油が少ない。


          Tokina AF19-35/3.5-4.5

気になっていたこれも名古屋コーチンの肉を使った肉まん。ご丁寧にも小麦も
愛知県産だとか。
あえて申し上げると、今まで食べた肉まんの中で一番美味しい。
250円はちょっと高いですが。


          Tokina AF19-35/3.5-4.5

どんだけ詰め込むんだ!というほど肉が入ってる。全部名古屋コーチン
(部位に寄っては和牛並の価格)だと思えば尊い。
250円などなんだ!という気になる。


    Tokina AF19-35/3.5-4.5

そのあと当然喉が渇いたので、野菜果物の即売テントで、甘夏を買う。ご覧のとおり小さいサイズのが、3個で100円。


          Tokina AF19-35/3.5-4.5

ベンチに座って、ぼーっと周りを見渡すと、小さな子供連れでいっぱい。
元来この施設は、うしさんやにわとりさんがいっぱいいるので、子供には
人気のため、親子連れが多いのですが、しだれ梅祭りの時期は、年配者が
圧倒的に多いのです。でも今年は子供も多い。なんという名か、
空気で膨らまして、中に子供が入ってボヨンボヨン遊ぶやつも来ているし。
そんな風景をぼんやり見ていると、先日見た映画を思い出しました。


             参考映像

思えば2016年は私にとって見ごたえのある邦画が何本もありました。
「シンゴジラ」
「君の名は」(これがマイベストワン)
「Planetarian 星の人」じつはこの
「この世界の片隅に」も当然みたいと思っていたのですが、お金も時間も
なくて行けなかった。
「ああ、DVD出たらレンタルするか」と思っていたのですが、案外上映が
続き、DVD発売される気配がない。
実はこの作品、最初は大規模な配給が実現できず(まあ諸説ありますが、
要は今更戦争中の映画は、あまり客が入らんだろということじゃないかと)、
本当に上映している映画館が少なかったのですが、じわじわ評判を呼んで、
上映館が増えていったのです。そのため年明けてから上映が始まった館も
あり、まだやってるところが多い。
「君の名は」の記録的な興行収益の陰に隠れた感がありましたが、制作の
段階から多くの原作支持者に支えられて、伸びていった映画なのです。
日本アカデミー賞のアニメ部門の作品賞も受賞し、未だに上映は続いて
います。
今回MOVIXのポイント消滅予告通知に釣られ、見に行く事にしました。

この映画は戦争の悲惨を描くとか、そういった正面きった反戦映画では
ありません。
舞台の広島県呉市は軍港の街ですから、大変な空襲を受け、町がほとんど
丸焼けになるという有様でした。全く空襲がなく、なんでじゃろねえと
皆思っていた隣の広島市は、最後にたった一発の原子爆弾で壊滅します
(アメリカ軍は、原爆の威力を後から検証する為に、あえて一般の空襲を
原爆投下予定地にはしなかったという)、。
広島生まれで呉にお嫁にいった主人公は、出征した兄を失い、実家の母を
原爆で失い、呉でも家族を失い、自身も大怪我をします。
このような状況の中で、毎日を懸命に生きた家族の物語。簡単にいうと
そういう物語です。

戦争に反対で憲兵に追い回される運動家とか、そういう人は出てきません。
出征した兄弟を気遣いながら、当時の日本の庶民は日本が戦争をしている
ことを、仕方ないこと。と受け止めています。
絶対勝つぞ!みたいな気負いもありません。
現代で言うと、やれ石油ショックだ、バブルだ、リーマンショックだ困った
なあ。みたいに、当時の庶民は戦争を受け止めています。
国民すべてが被害者ではなく、加担者であったわけで、
3歳の女子が、プリキュアを語るように戦艦大和や零戦を熱く語る時代です。

実は終戦後すぐに、となりの九州では新聞4コマ漫画
「サザエさん」の連載が始まっています。
今では日曜夜の平和な日常の象徴のように思うこの番組ですが、
長女サザエと長男カツオ、次女ワカメの歳が離れすぎている。
という設定がよく謎扱いされます。
実はこれは当時の家庭にはよくあったこと。すなわち磯野波平氏が、
フネさんと結婚して一子を設けた後、すぐ出征したことを暗示しています。
終戦で復員したのち二子を設けたわけです。
このように戦後を肌で感じて育った私。いわゆる、
「戦争を知らない子供たち」は、この物語を歴史物語のように語ったり、
極めてメッセージ性の強い反戦映画のように受け取ったりはできません。
懸命に生きた庶民の暮らしを共感することによって、平和の大事さを
再認識するのがこの映画の正しい見方であるように思います。

「火垂るの墓」という、こういった作品では不朽の名作があります。
野坂昭如の原作は読みましたが、ジブリの作品は見ていません。
当時ジブリ作品はほとんど映画館で見たはずですが、最初トトロは
火垂るの墓と同時上映だったですのに、見ていないのはおかしいのですが、
単品上映の二番館で見たのでしょうか?
火垂るの墓は、いつかは見なければ。と思いながら、現在に至って
おりますが(原作でかなりトラウマになったので正直見るのが怖い)、この
「この世界の片隅で」は、あの作品ほどの強烈な印象を感じませんが、
本当に大切な作品。


          Tokina AF19-35/3.5-4.5

こんなのどかな光景を見ると、私のように年老いて、もう
「次の日本は若い世代で決めればいい」
と思ってしまっている人間でも、兵隊だけでなく一般市民を巻き込む
戦争への道を、日本はもう選ばないでほしいなあ。と改めて思いました。


          Tokina AF19-35/3.5-4.5

というようなことを、極めて平和な梅の祭典。賑やかに遊ぶ子供達を
眺めながら思ったのでした。
戦争の前、大正や昭和初期の時代の日本も、このように豊かで平和な光景が
日本にはあったのですから、本当に戦争というものは、
人間の犯す最も愚かな行為。と言わざるを得ません。


         iPhone7plus

帰りには、近所にできた今の日本の象徴である(世界中の人間が羨ましがる
24時間年中無休営業で生活に困らない品数豊富な)コンビニ。
ローソンの”街カフェ”でコーヒーを飲みながら、いつまでも続け平和と繁栄!
と思ったのでした(ホットを頼んだのにアイスコーヒーが出てきても、
怒ったりしない成熟した国民性の国の私(自画自賛))。
ってか店員さんが美人なので、許してしまった私(反省(笑)))。

日常コラムINDEXに戻る




../NichijouColumn/D7BE2CD9-278E-479F-9E31-92F79F8B2D11.htmlshapeimage_2_link_0