ナゴヤからの手紙
 
2019年2月
「麺食いの2月」

指定ないものはiPhone7plus
蕎麦は信州、うどんは讃岐、でしょうか?ラーメンはそれこそ各地に、
ですが、実は愛知県も麺食い文化では負けていません。特に三河地方はかつて
慢性的に水不足だった地方で、愛知用水が出来るまで、なかなか米作が困難
だったため、小麦を使ったうどんの食文化がありました。
池波正太郎先生の”仕掛け人藤枝梅安シリーズ(TVシリーズ名必殺仕掛人)”
の中で、梅安が東海道を旅するシーンで、
「芋川のうどんが結構いけますよ」と言っているのが池里府(知立)の宿場
辺りで、この芋川というのが一説によると”ひもかわ(きしめんの様な平たい
麺)”の語源とも言われます。
最近岡崎によく行きます。5/4に豊郷で行われる
「桜高新入生歓迎会」に今年も出店するのですが、今年は同人になって
いただく絵師さんが豊川の方なので、中間点ということで、岡崎で打ち合わせ
をするのです。
前回はタイ料理でしたので、今回はうどんの名店にいたしました。
岡崎は徳川家康の城下町ですので、さすがに米がなかったわけではないで
しょうが、やはり三河全体が小麦文化圏なんでしょうね。

資料画像
「大正庵釜春本店」
ネットで調べたらここが一番の様でしたので、絵師さんに確認したら、さすがよく
ご存知で、
「大正庵釜春は何件も支店があるけど、本店じゃなきゃだめです」とのことで、
混むというこの店に開店前に到着。確かにあっという間に満席になりました。
岡崎は最近もろこしうどんという、地元の人が愛する一品が”ケンミンShow”で紹介された
ためか有名になっており、この店でも出してますが、まあ缶詰コーンをどさっと入れた
うどんらしいので、これは次回にするとして、この店の名物”釜あげ”をいただきます。

尾張地方では”湯つけ”という食べ方がありますが、うどんはかなりの塩を
入れて小麦粉をこねるので、生麺をゆでると茹で湯にはかなりの塩分が
残ります。そのため本来は暖かいうどんの場合でも一旦ざるにあけ、冷水で
洗ってから使うのですが(スーパー等で売っているビニール袋入りのうどんが
この状態)、ここの店主が夏のざるうどんの様に、暖かいままのうどんを
出せないか研究を重ねて商品化したのが、この”釜あげ”です。
もしかしたら”湯つけ”は、一旦洗った麺を、また湯に入れるのかもしれません。
ここの麺はそのまま出せる様、うどんの塩分を少なくし、さらに冷水で締め
なくてもコシのあるうどん作りを開発したのでしょう。
うどんを包んで足で踏むやり方で、弾力はあるが滑らかなうどんを作り出して
います。いわゆる讃岐系とはまたちがう旨さですね。
ご飯が自慢で、白飯を名物にしている店はありませんが(全国の中にはある
かもしれない(笑))。この釜あげは麺の旨さが即だれにでもわかるので、
自信がないとできないメニューです。
やっぱり本店が美味いというのも、その辺のキャリアの差かもしれませんね。

大正庵釜春
愛知県岡崎市中岡崎町
創業明治中期(多分創業時は大正庵という店名ではないだろうことは、
まもなく年号の変わる今年のこの時期ならわかる(笑))

塩といえばあれほど有名な名古屋のきしめんと味噌煮込みですが、
これが全くの別物であることは意外と理解されていない事が多いです。
今池に一軒だけきしめんの味噌煮込みをやる店があり、店主に聞いた所、
味噌煮込みは生麺から煮込むため、麺づくりに塩を使えない。きしめんの様な
薄い麺を塩なしで打つのは相当難しく、保存も効かないので普通はやらない
んだそうです。
私は、どちらかというときしめんよりは味噌煮込みの方が好きですが、
なにぶんにも高い。まあ昨今は1000円以上出さないと食べられない店が
多いです。絶滅危惧種じゃあるまいに、と思うのですが、きちっとした
八丁味噌(岡崎ですね)を使わないと名古屋の人は承知しないので、原価が
高いのでしょう。
かといって三河の岡崎に対抗できるうどん屋は?というと、なかなかない。ネットでも、口コミでも、私が行ってみた結果でも、名古屋で間違いなく
一番のうどんを出す店は、地下鉄中村区役所ちかくの
「かとう」ですが(ここは本当に旨い)、ここは店主が本場讃岐で修行した
讃岐系。名古屋伝統のうどんというものがあるとすれば、それはやはり
味噌煮込みだと思うのです。
と思ってましたら、東区にそれこそ戦前から地元で愛されているうどん屋が
あり、そこは600円!とのこと。
今時その辺のうどん屋の素うどんより安いとは…。
もちろん、天ぷらなどは入らないとしても鶏肉や卵さえ入っていない
”素味噌煮込み”で、デラックス版は1200円なのですが、贅沢な具は欲しいとは
思いません。

かまぼこと油揚げは入ってますね(笑)。
かつてソンガーシングライターであった私は、ご当地ソングを作ろうとして、
”味噌煮込みブルース”という曲を作りました。
まあ曲は憂歌団の”JellyRoll BeakaryBlues”なんですが。

”味噌煮込みブルース”

門前町の裏通り ばばさが作る味噌煮込み
甘ゃあのか辛りゃあのか、熱て全然わからん
ばばさの作る味噌煮込み

50円出せば卵が入る 100円出せば餅が入る
だけど俺たちゃ なんにも入(ひ)ゃあとらん500円
ばばさが作る味噌煮込み

お待ちどうさま 熱いで気ぃつけてちょうよ
蓋を取ったら ぐつぐつ言っとる
これが名古屋の 味噌煮込み
ばばさの作る味噌煮込み

やっとかめに 行ってみれば
店はあらせん 町の噂じゃ
ばばあは死んで あとはタイムスになるらしい
もう食べられん味噌煮込み
ばばさの作る 味噌煮込み

こんな店が昔はどこも町内にもあったのですが、今はいわゆる名店ばかり。
今回行った店は、いわゆる名店ですが、この価格で抑えてるのはさすがです。
ただ今回は取材ということで、もう一品頼んでしまいました。
「味噌カツ丼(小550円)」
味噌カツなんて大した歴史でもなかろうに名古屋飯の王者みたいな顔してる
のが気にくわないのですが、ここの店のメニューも、味噌煮込み程の歴史は
ないにしろ、定番になっています。ご飯が多い普通の方でも600円。
税込みですから”かつや(かつ丼税抜き550円)”なみに安いですよね。
ここのはいわゆる味噌をかけた味噌かつではなく、普通のカツ丼の上盛り
(卵も入ってる)に味噌が入ってる感じ。従ってカツは煮込まれています。
サラリーマンが、この味噌カツ丼を食べに来ています。
これはひらすら甘い味噌で、いわば昔の名古屋ならどこのうどん屋にも
あった”どて飯”の系譜だと思えば納得が行きます。

いささか、予算&カロリーオーバーでしたが、この車で一回通り過ぎてしまう
ほど地味なお店が、あたかも名古屋のテーマパークであるかの様に、
ランチを楽しみました。
安い1150円だとは思いますが、どっちも味付けの違う味噌味なので、
次回からはどちらか一方にしようと思います。

岩正手打うどん店
名古屋市東区筒井商店街
創業明治35年。

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